【西川和久の不定期コラム】SCE「nasne」 ~NAS/メディアサーバーにも対応したネットワークレコーダー
8月30日に出荷開始となったソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のnasne。既にいろいろ情報が載っているだけに、出遅れ感があるものの、約2カ月使っての使用レポートをお届けする。安価で小さいながらも筆者のメディアサーバー環境を一新する優れものだ。
●約1.5万円でネットワークレコーダー付きの多機能メディアサーバーnasneの話題に入る前に、少し筆者のTV周りをご紹介する。常設機器はPS3+torne、U-NEXTのセットトップボックス、Apple TV。そしてもう1つのHDMI入力には、モトローラXOOMや新しいiPad、昔ご紹介したAspireRevo ASR3610-A44(IONプラットフォーム)などをたまに接続している。
サウンドに関しては音質はあまり良くないかも知れないが、映像と同時に切り替るのが便利で、TVの光デジタル出力(4ポートあるHDMI入力のアクティブな映像の音声が出力される)へ自作DACとアンプを接続、スピーカーはJBLの「LE-8T」……と、何だか意味不明の構成だ。
各機器の用途は、PS3がDVD/BD再生とDLNAクライアント、U-NEXTのセットトップボックスはオンデマンドで映画やドラマ、Apple TVはMac mini上のコンテンツやネットラジオ、YouTubeの再生となるだろうか。
実のところ筆者は、お気に入りのドラマや観たい映画などが放送されない限り、全くと言っていいほどTVは観ていない。またドラマに関してはU-NEXTで有料になるが(ポイント対象なので実質は無料)、現在放送中のものも含め最近のタイトルならほぼ全て観られるので、まとめて一気に楽しむことができる。
これらが理由でTVは単に大型ディスプレイ化し、アンテナはもちろんB-CASカードすらセットしていない状態だ。PS3につながったtorneは、発売当初、記事ネタで購入し、たまに留守録する程度の使い方となっている。
今回nasneを購入した理由は、Core 2 Quad搭載のPCがメディアサーバーになっているのを省エネ、そして静音化が主な目的でのリプレース。これだけならほかにもいろいろメディアサーバーに対応したNASなどもあるが、滅多に観ないとは言え、ネットワークレコーダーを搭載しているのも選んだ理由の1つにはなっている。主な仕様は以下の通り。
【「nasne」/CECH-ZNR1Jの仕様】内蔵HDD | 500GB/2.5インチ |
インターフェイス | Gigabit Ethernet、アンテナIN/OUT、USB 2.0×1、B-CASカードスロット |
受信チャンネル | 地上デジタル:VHF帯(1~12ch)、UHF帯(13~62ch)、CATV帯(C13~C63ch )、衛星デジタル:BS/110度CSデジタル(1,032~2,071MHz) |
消費電力 | 録画中、2ストリーム配信時:9.5W/省電力モードスタンバイ時:1.5W |
付属品 | ACアダプタ、電源コード、LANケーブル、アンテナケーブル、B-CASカード、PS3専用TVアプリケーション「torne(トルネ)」 |
サイズ重量 | 43×189×136mm(幅 x 奥行き x 高さ)/約460g |
価格 | 16,980円(税込) |
内蔵HDDは2.5インチの500GB。フォーマット済の状態で約464GB使用可能だ。インターフェイスは、Gigabit Ethernet、アンテナIN/OUT、USB 2.0×1、B-CASカードスロット。NAS用途やメディアサーバーにコンテンツを転送する時、Gigabit Ethernetになっているのは転送時間が短く済みポイントが高い。USB 2.0は外部HDD増設用だ(最大2TB)。
受信チャンネルは、地上デジタル:VHF帯(1~12ch)、UHF帯(13~62ch)、CATV帯(C13~C63ch )、衛星デジタル:BS/110度CSデジタル(1,032~2,071MHz)の3波対応。DR(高画質)/3倍(標準)の録画モードを持つ。
またnasne最大の特徴は、映像・音声系の出力は一切持たず、IP配信に徹していること。従って何かのクライアントが無いと、再生することはできない。なかなか割り切った仕様であるとともに、よく製品化したなと感心する次第だ。
サイズは43×189×136mm(幅×奥行き×高さ)、重量約460g。消費電力は録画中、2ストリーム配信時9.5W、省電力モードスタンバイ時1.5W。筆者が一番気に入った部分はこの2点。先に書いたCore 2 Quadのサーバー機より、大幅に省スペース・省エネが期待できる。amazonでの購入価格は15,435円。これだけのものがこの価格はかなりお買い得と言えるだろう。
フロント。上から、電源ランプ、RECランプ、IPステータスランプ、HDDアクセスランプ | リア。電源ボタン、リセットボタン、USB 2.0、Ethernet、アンテナOUT、アンテナIN、電源入力 | 左側面。B-CASカードスロット |
右側面。こちらの面には特に何も無い | 電源スイッチの位置。非常に押しにくい電源スイッチ。長押しで電源OFF | 付属品など。ACアダプタ、LANケーブル、PS3専用TVアプリケーション「torne(トルネ)」。この他に電源コード、アンテナケーブル、B-CASカードがある |
仕様からサイズは予め分かっていたものの、実際ものを見ると、かなり小さく、薄い。ほとんど無線ルーター並みだ。このサイズに2.5インチのHDDと3波チューナが入っているとは驚き。振動やノイズは皆無で発熱に関してはほんのり暖かくなる程度。常時ONになる機器なだけに、嬉しいポイントだ。
フロントにはスイッチやコネクタなどは無く、上から順に電源ランプ、RECランプ、IPステータスランプ、HDDアクセスランプが配置されている。リアは、電源ボタン(長押しでOFF)、リセットボタン、USB 2.0、Gigabit Ethernet、アンテナOUT、アンテナIN、電源入力。この電源スイッチはかなり押しにくい。とは言え用途がサーバーなので、簡単に押せてしまう方が問題だろう。
各接続は非常に簡単で、アンテナINへアンテナケーブル、Ethernetにネットワークケーブル、最後にACアダプタを接続すればnasneが起動。IPアドレスは(多くの場合)無線ルーターからDHCPで自動的に割振られる。また購入時、ファームウェアのバージョンが古いままっだったので、ネットに接続されたと同時に「nasne HOME」で新しいバージョンがあるとの表示があり、更新をかけた。基本的に無線ルーターを設置した事のあるユーザーであれば特に難しいことは無いだろう。
PS3側は、筆者の場合既にtorneが入っていることもあり、バージョンを4.0以上にアップデート、SETTINGS→nasne/「レコ×トルネ」設定→nasne設定で準備完了だ。この時、注意が必要なのはPS3側だ。もともとWi-Fi接続していたが、この状態ではnasneにある録画を再生する時、音飛びやコマ落ちが激しいため、有線LANへ接続し直した(マニュアルにも記述されている)。
nasne HOME | 基本設定1 | 基本設定2 |
メディアサーバー設定 | ファイルサーバー設定 | レコーダー設定1 |
レコーダー設定2 | ハードディスク管理 | システムソフトウェアアップデート |
この「nasne HOME」は、雰囲気は無線ルーターなどの設定画面と良く似ており、Webブラウザでnasneに割当てられたIPアドレスを入力すると、ID/PWなどの設定は無く、いきなり表示される。
メニュー項目は、基本設定、メディアサーバー設定、ファイルサーバー設定、レコーダー設定、ハードディスク管理、システムソフトウェアアップデート、nasneについて、オンラインマニュアルの8つだ。
基本設定は、ネットワーク設定/日付と時刻/省電力モード/設定の初期化。メディアサーバー設定は、メディアサーバー名/メディアサーバーアイコン/データベース更新/クライアント登録/クライアント機器管理。ファイルサーバー設定は、ファイルサーバー名/ワークグループ名/共有フォルダ名。レコーダー設定は、チャンネル設定/視聴年齢制限設定/リモート録画予約設定/その他/有料放送のご案内。ハードディスク管理は、外付けHDDの登録と削除/使用状況となる。
どの項目も単機能であり、見ればわかるものばかりなので設定は簡単。チャンネル設定以外はデフォルトの状態で特に問題ない。基本的にシステムの管理画面なのだが、「この画面で番組表が表示され録画予約/確認できれば便利なのに」と思うのは筆者だけだろうか(「Gガイド.テレビ王国CHAN-TORU」には対応している)。
●バージョン1.5でメディアサーバー機能追加nasneの目玉は汎用的なメディアサーバー(DLNA1.5)にもなる点だ。もしこの機能が無かったらtorneで十分なので購入してなかっただろう。出荷が遅れたこともあり、購入時には既にこの機能を追加したバージョン1.5が公開されていた。
対応しているフォーマットは、VideoがMPEG-1(.mpg .mpeg .m1v)、PMEG-2 PS(.mpg .mpeg .m2p .vob)、MPEG2-TS(.mpg .mpeg .ts .tts .m2t .m2ts)、AVCHD(.m2ts .mts)、MP4(.mp4 .m4v )、AVI(.avi)、WMV(.wmv)、DivX(.divx .xvid)。MUSICが、LPCM(.wav)、MP3(.mp3)、AAC(.mp4 .m4a .m4b .ma4 .3gp .3g2 .3gp2)、WMA(.wma)。PHOTOが、JPEG(.jpeg)、BMP(.bmp)、GIF(.gif)、PNG(.png)、TIFF(.tif .tiff)、MPO(.mpo)……と、ほぼ全て網羅している。
ただ一点、比較的よく使うフォーマットで未対応なのがMOV(.mov)。iMovieで編集して書き出すとこのフォーマットになるため困っている。現状はMOVに限り、Apple TVで再生しているので大型TVで観れるには違いないものの、できればシステムを一本化したい。またiPhoneで撮影した動画もMOV。それなりに需要はあるのではないだろうか。技術的に可能であれば対応して欲しい。
DLNAサーバーになっているnasneからWindows Media Playerで再生 | NASとしてWindowsマシンから接続 | DTCP-IP対応している「DiXiM Digital TV 体験版」でライブチャンネル表示 |
コンテンツの転送は非常に簡単。ネットワーク上に[NASNE-xxxxxx]と表示されているので、それにアクセスすれば、共有フォルダである[share1]以下にフォルダやファイルを自由に配置できる。もちろんNASとして使うならデータをコピーしてもOKだ。Gigabit Ethernetで接続されているため、コピー速度もそこそこ速い。ただし、録画したファイルは見えず、アクセスできない構造になっている。
DTCP-IPで保護されていない普通のコンテンツは、WindowsやiOSデバイス、Androidなどから、DLNAに対応したクライアントで問題無く表示できる。ちょっと気になるのはWindows 7+Windows Media Playerの組合せで、ご覧のように同じファイル名がいくつも並ぶこと。ほかのクライアントアプリではこの現象は出ていない。
同社としては非推奨であるものの、DTCP-IP対応しているDLNAクライアントを使えば、録画した動画も理論上は再生可能だ。Windows版なら「DiXiM Digital TV 体験版」があるのでインストールして試すことができる。iOSやMac OS Xは対応したクライアントが無く現時点では再生不可能。Androidは以前Google「Nexus 7」で紹介した「Twonky Beam」なら3倍モードで録画した動画に限り再生可能(モトローラXOOMはNGだった)。また各スマートフォンに該当するクライアントソフトがプリインストールされているケースもあるので、興味がある人は調べて欲しい。
いずれにしてもこれだけ小型で省エネのマシンで500GBものコンテンツを扱えるのは非常に便利。一通り試し問題無かったので、Core 2 Quadのサーバーマシンは片付けてしましまった。
●torne+nasnetorneとnasneの違いは大小いろいろあるが、一番の違いは、前者はPS3が必要なこと、後者は、(見る環境はさまざまだが)単独作動できること。もちろん両方同時に使うことも可能だ。この時、PS3であれば最大4台のnasne+torneをシームレスに利用できる。
筆者はたまにしか使わないものの、一般的にはこちらの方が興味あるだろうtorneとの組合せ。一旦セットアップが終わってしまうと、再生も録画もtorneかnasneか意識せずに使うことが可能だ。セットアップ自体もほとんどtorneと変わらない。この辺りの設計は流石と言ったところ。意図的にnasne側に録画する時は、録画予約時にnasneを選択するだけでいい。
torneを使わず、PS3のDLNAクライアント機能でnasneにアクセスすることも可能だ。「ライブチューナー」は各チャンネル現在放送中のストリーム。この方法だと、nasne側に転送した普通のコンテンツも一緒に表示される。一旦再生が始まれば、(観ること自体は)どちらを使っても大差無い。
PS3/DLNAムービー | torne SETTINGS | torne SETTINGS/nasne情報 |
torne SETTINGS/nasne設定 | torne SETTINGS/nasne設定/名前の設定 | torne SETTINGS/nasne設定/地域選択 |
torne SETTINGS/nasne設定/地デジチャンネルリスト | torne SETTINGS/nasne設定/モバイル予約機能 | torne SETTINGS/nasne設定/ハードディスク設定 |
torne SETTINGS/nasne設定/登録の解除・初期化 | torne SETTINGS/nasne設定/nasne HOMEへ | 予約録画時、保存先(torne or nasne)と録画モード(DR or 三倍)が設定可能 |
ネットワークレコーダーの機能としては、インターネットを使った録画予約、リモート録画機器登録、トリックプレイ/シーンサーチ、レジューム再生、DTCP-IP Move/ダビング10対応、マルチクライアント(DTCP-IPストリームを同時2本)、周波数変更時の自動追従……など一通りあるが、多くの機能は筆者の興味対象外なので使っていない。
2点ほど対応して欲しいことがあるとすれば、torneで録画したデータをnasne側へムーブする機能と、torneのチューナをUSBポートから外してもnasneがある場合は、そのままソフトウェアが起動して欲しい点だろうか。
torneの発売は2010年3月18日。流石にほとんどTVを観ない筆者でも、それなりの本数が、PS3のHDDに溜まっている。HDDの容量を確保するために全てnasneへ転送したいのだが、現状それができない。検討項目にはなっているようなので、是非対応をお願いしたい。
またチューナをUSBポートから外すと、ソフトウェアが起動しなくなる。これを回避するにはチューナを外した状態でソフトウェアを再インストールすればいいらしいが、既にPS3に入っている録画データの扱いがどうなるのか不明なので試していない。少なくとも筆者のケースではnasneがあるとtorne側のチューナは不要なので外したいところだ。
torneのチューナをUSBポートから外すと、nasneはあるのにtorneが起動できない |
最後試しにAndroidの専用アプリ「RECOPLA」やWindowsの専用アプリ「VAIO用nasne連携ソフトベータ版」を非ソニー機へインストールしたところ、対象外のデバイスだと弾かれた(Nexus 7はRECOPLAをダウンロードもできず)。ある意味仕方ない部分だが、(動く動かないは別問題で)デバイスチェックだけでも外して欲しいのは無理な相談だろうか。
以上のようにソニー「nasne」は、ネットワークレコーダーそしてメディアサーバーやNASにもなる小型のネットワーク機器だ。より便利に使うには、PS3やVAIO、Xperiaなど、同社のクライアントが必要になるものの、筆者のように、省スペース・省エネ・静音目的でNAS/メディアサーバーにするのも十分にありだろう。Nexus 7で録画を楽しむことができるのも嬉しい誤算。今年一押しのメディアサーバーだ。