Z世代はもう旧い、ブランドのターゲットはアルファ世代に
アルファ世代の多くの家庭にはタブレットやKindleがある。コロナ禍で図書館が使いづらくなったこともあって、ウチの子供のクラスでも課題の読書を電子書籍で読んでいる子が多い
少し古いデータになるが、英Beano Studiosが昨年6月にアップデートした世代調査によると、特徴としてアルファ世代の親にはデジタルネイティブであるミレニアムズが多い。本人だけではなく、家族全体がデジタルネイティブという環境で育つアルファ世代はデジタルマスターとも呼ばれる。例えば、アルファ世代の子供達の半分近くが親のシェアレンティング(Sharenting:親が自分の子供に関するコンテンツをネット上で公開すること)を嫌がり、投稿する前に自分の許可を取ることを求める。一方で親世代は60%が一言たずねることなく投稿している。親世代より子供世代の方がプライバシー意識が高い。
YouTuberやネットのインフルエンサーの影響を強く受けるが、フェイク問題に踊らされた上の世代と違ってアルファ世代はネットの情報に流されやすくない。Beanoの調査では62%がYouTuberの行動に批判的になることが多いと答えている。自身の強い倫理観や考えを持っていて、同意できないインフルエンサーの態度や行動、考えなどを率直に批判する。
親がサブプライムローン問題に端を発する世界規模の不況を体験した世代であり、独立心を持つように育てられた影響だと考えられる。5~9歳の5人に1人が親に連れられてデモ行進や抗議活動に参加した経験を持ち、保護者のほぼ半数が自分の意見を子供が主張することを支持している。そのため環境やジェンダー平等のような社会問題に"一家言あり"な子供が多い。
そしてポスト"Stereotypes"世代である。型にはまった考えや見方を嫌う。これまでだとジェンダー平等の議論が「女子はピンクを着る」のを拒否する二元論に陥りがちだった。それでは平等を重んじる女の子はピンクを着ないという別のステレオタイプを生んでしまう。アルファ世代になると、好きならピンクを着るし、男子と同じようにフットボールも楽しむという自由な考えを持つ。
ただし、その強い倫理観がキャンセル・カルチャーとなって現れる面もある。キャンセルカルチャーとは、同意できない個人の行動や発言を糾弾し、その人が仕事や地位を失うほどの強い反発やバッシングに見舞われる現象を指す。法律上の犯罪でなくとも、倫理的に許されないことについて、現在の行為だけでなく過去にさかのぼって追及されることもある。例えば、若い層の支持を得ていた美容インフルエンサーのジェームス・チャールズが春に数日で300万人もの登録者を失った。仲間を裏切るようなトラブルが発端で、過去のふるまいや言動まで追求されて瞬く間に大炎上した。
アルファ世代はクリエイティブでもの作りの意欲が強い。過半数がクリエイティブなビデオ作りを好み(55%)、2/3がゲームなどでデジタル世界を作成している。43%がロボティクスを楽しみ、36%がコーディングのスキルを持つ。そして過半数が、そうした自分の好きなことからキャリアを構築していけると考えている。起業意欲も強い。
そしてデジタル世代でありながら、リアルな生活や家族との時間も楽しんでいる。画面を見つづける悪影響が危惧され、スクリーンタイムを制限して育てられた世代である。それによってリアルなものの面白さや価値も理解している。47%が外で遊ぶことが好きと回答。編み物や手芸のような趣味を楽しむ子供が、Z世代の32%に対してアルファ世代は42%と多い。アルファ世代は約半数(48%)がデバイスから離れて過ごすことが多く、Z世代はわずか29%だ。だからといって、テクノロジーに否定的なわけではなく、テクノロジーに依存せず、テクノロジーを活用するという意識が強い。
ウチの子供がアルファ世代の年長グループということで調べてみたが、「なるほど〜」と納得させられることがたくさんあった。とはいえ、まだ小学生達であり、アルファ世代の本当の特徴が見えてくるのはこれからである。
アルファ世代をターゲットにした広告も、例えば、LaloはFisher-Priceの幼児向け家具に比べて無駄を廃したミニマルなデザインを、Maisonetteは玩具に原色ではなくパステルカラーを活かしていることを、Little Spoonはオーガニック食材の使用をアピールしている。今のような困難な状況にあっても、子供のものには財布のひもがゆるむ。ミレニアルズに響く形でアルファ世代向けの商品をアピールしているのが今のアルファ世代向けのマーケティングである。そうした環境の中で、ミレニアルズの子供達であるアルファ世代の特徴が形づくられている。