ソニー「バイオノート505エクストリーム」
今でも超えられぬ強烈な薄さ
バイオノート505エクストリームが発表されたのは、2003年11月12日のことである。B5モバイル「バイオノート505」の直系とも言えるこの製品は、バイオノート505とほぼ同じフットプリントでありながら、厚みを9.7~21mm、重量を825gに抑えた、当時世界最薄/最軽量のモバイルノートであった。
最厚部が21mmというのは、Intelが2011年に定めたUltrabookのレギュレーションにもなっている。そういった意味でバイオノート505エクストリームは、今の薄型モバイルノートのデファクトスタンダードを作った(と言っても、Ultrabookが流行った頃のモバイルPC業界に薄さをもたらしたのはAppleのMacBook Airであることに異論はない)。とは言え、当時シャープは最厚部19.6mmの「MURAMASA」シリーズをリリースしていたので、驚くほど薄いかと言われればそうでもない。
しかし、本製品で注目すべき点は、当時世界最薄を実現した9.7mmという最薄部である。もちろん「いや、MacBook Airは3mmだから」と仰る読者もいるだろう。が、写真を見てもらえば分かる通り、実際に机に置いた場合、MacBook Airと遜色ない薄さを実現している。MacBook Airの3mmは、あくまでもくさび形のデザインがもたらしたものであって、中央部に行くにつれ膨らんでいく。それに対してバイオノート505エクストリームはほぼ直線に近く、一貫してできる限りの薄型化を追求している。
また、MacBook Airの先端は「<」の形をしているのに対し、バイオノート505エクストリームは「Σ」の形をしている。このΣの形は、液晶を開くための取っ掛かりになっているという、実用性を兼ねたデザインとなっているのだが、この設計思想もMacBook Airの薄さに及ばない理由の1つでもある。
最厚部でも21mm。これはUltrabookのスタンダードにもなっている薄い印象のMacBook Airと引けをとらない薄さ机に置いた時はバイオノート505エクストリームの方が薄いもっとも、バイオノート505エクストリームが薄さを実現する上で一番“損”しているのは液晶ディスプレイの部分だ。現在、液晶パネルのLEDバックライト化などによって薄型化が進んでおり、MacBook Airの薄型化もそれによってもたらされたと言っても過言ではない。バイオノート505エクストリームが現代に生まれていて、現代のディスプレイ技術を用いれば、もっと驚異的な薄さを実現できたはずである。
そんなわけもあって、液晶を閉じた状態よりも、机の上で液晶を開いた時の薄さのインパクトの方が強烈だ。これは確実にMacBook Airと比べて薄い。Σの下の形で机とシームレスに繋がり、それが視覚的に薄い印象を与えているというのもあるのだが、「机にキーボードが埋め込まれていて、それがわずかに浮かび上がっている」という印象すら覚える。
開いた時に見える面がブラウンがかったガンメタリック色というのも、濃い木目調の机の上に置いた時の統一感を高めている。手前に用意されたアンバー色のバッテリとHDDのLEDも、“動いてます!!”と主張するブルーLEDとは一線を画し、さり気ないアクセントとなっている。バイオノート505エクストリームは閉じていても美しいが、開いている時がもっとも美しいと思う。
シリンダー状のバッテリとヒンジや、底面までもVAIOのロゴが入ったデザイン……この製品デザインに関して語ればキリがないのだが、ここまでデザインを突き詰めたモバイルノートはかつて存在しただろうか。バイオノート505エクストリームは、まさにエグゼクティブが使うPCにふさわしいデザインの完成度を誇っている。