【西川和久の不定期コラム】Android 4.2 ~マルチユーザーなどに対応した最新Android
11月14日未明にNexus 7用のAndroid 4.2がリリースされた。ローリングアウトと言う方式でOTAされるため全ユーザー一斉ではなく順次配信となる。筆者の場合、翌日15日の朝に更新が来た。変わった点をメインに早速使用レポートをお届けする。
●4.1.2から4.2へアップデート現在スマートフォンを中心に多くのAndroid機は、やっと4.0.x(Ice Cream Sandwich)への移行/アップデートが始まったばかりであるが、Nexus 7はもともと4.1.x(Jelly Bean)を採用し、一足早く新機能や使い勝手などを体験できた。使用感などは、別途レポートしているのでそちらを参考にして頂くとして、今回は4.2で追加された部分を中心に書いて見たい。
4.1.xから4.2へのアップデート自体はOTAなので非常に簡単だ。アップデート可能になると、画面キャプチャのような表示が出て、「再起動してインストール」をタップすると、再起動後OSの更新が始まり、数分で終了。起動するとロック画面となる。
早速ここで違いがあり、画面に「+」の表示が追加されている。4.2の「ロック画面へウェジェットが置ける」新機能だ。アプリ側での対応も必要なため、現時点では標準の「時計」、「カレンダー」、「Gmail」のみ配置できる。
ロック解除せずに情報が見られるため確かに便利なのだが、ロック画面は、所有者以外でも容易に見られる。そのため、時計はいいとしても、カレンダーやGmailは少し抵抗がある。天気予報など無難なウェジェットの早期対応が望まれる。
ホーム画面の変化はパッと見無いものの、スマートフォンUIの時、上部のステータスバーから下へスワイプすると、通知領域の表示となっていた部分が若干変更された。
中央から左側を下へスワイプすると従来通り通知領域が表示。右側を下へスワイプすると、これまで「電源管理ウェジェット」で設定可能だった、「画面の明るさ」、「設定」、「Wi-Fi」、「画面の向きをロック」、「バッテリー」、「機内モード」、「Bluetooth」の設定が可能になった。一番下の枠が空いているので、今後GPSのON/OFFが欲しいところだ。
細かい点としては、設定→ストレージ→キャッシュデータの項目からキャッシュデータの消去にも対応したことが挙げられる。そのほか、「Google Now」がより洗練され、ソフトウェアキーボードで指を滑らせて入力できる「Gesture Typing(英語のみ)」も追加されている。
4.2へのアップデートの通知 | 再起動するとロック画面にウェジェットが配置可能へ | 現在、時計とカレンダー、Gmailが配置できる |
他のウェジェットは対応待ち。ただし誰でも見ることができるので、あまりプライベートなものは置かない方がいいだろう | Androidのバージョン4.2 | 従来の通知領域に加え、右上辺りを下にスワイプすると、明るさやWi-Fi設定などの設定パネルが表示される |
設定→ストレージ→キャッシュデータ→キャッシュデータの消去 |
設定→ディスプレイでは「スクリーンセーバー」が追加された。設定できるのは、時計、カラー、カレント、フォトテーブル、フォトフレームの5種類。項目の右側に設定アイコンがあるものについては詳細を指定できる。例えば時計であれば、スタイル:デジタル/アナログ、夜間モード:暗い部屋で使用ON/OFFと言った具合だ。カレントは、設定しているRSSフィードを順次表示する。
「スクリーンセーバー開始のタイミング」は、ホルダー装着時/充電時/いずれかを選択可能だ。デフォルトではホルダー装着時になっているので、この項目に気付かないと、スクリーンセーバーをONにできない。
設定→ディスプレイ | 設定→ディスプレイ→スクリーンセーバー | 設定→ディスプレイ→スクリーンセーバー→開始のタイミング |
性能面の変化を見るため、4.1.2と4.2で「MOBILE GPUMARK」を実行したところ、RIGID GEMS/DEAD PARKING/NATURAL BONEのスコアはほぼ同じだが、GPU BENCHMARKは300程度4.2の方が速くなっている。au版XOOMのスコアが1,717っだったことを考えるとその差は小さくないと思われる。これが関係しているのか、4.1.2でも表示はスムーズだったが、4.2ではさらに滑らかに動く感じがする。
Android 4.1.2でのMOBILE GPUMARKの結果 | Android 4.2でのMOBILE GPUMARKの結果 |
気になる点としては、4.2では動かないアプリがある。筆者が確認した範囲では、Firefoxが該当する。起動はするものの、少し触るとすぐ落ちてしまう。早期の対応を望みたい。
【11時25分追記】Firefoxが更新され、Android 4.2対応となりました。
●注目のマルチユーザー対応個人的に注目したいのが、マルチユーザー対応だ。特にタブレットの場合、所有者だけでなく、例えば家族なども使いたいのはよくある話だ。単一ユーザーしか考えていない従来のシステムでは、メールだったり、写真だったり、プライベートの情報が簡単に他人でも見れてしまう。この問題に対応すべく、4.2から複数のユーザーを切り替えて同一デバイスを使えるようになった。
ユーザー→右上の「ユーザーを追加」 | 新しいユーザーを追加する |
ユーザーを今すぐセットアップ | ロック画面で新しいユーザーでログイン |
仕掛けは非常にシンプル。2人目からは、設定→ユーザーの右上に「ユーザーを追加」の項目があるので、これをタップし指示に従えばロック画面へ戻る。新規ユーザーのアイコンが表示されるのでタップし、ロック画面を解除すると、購入直後に行なった初期設定画面が現れる。
後は必要な項目を入力しログインすれば完了。初期状態のホーム画面となる。もちろんGoogleアカウントは個別にセット可能だ。好みのアプリなどを設定し、完全に独立した環境を構築できる。軽く試した範囲では、他のユーザーが使っているアプリやデータには一切アクセスできない。
ようこそ | Googleアカウントをお持ちですか? | Googleを利用する |
Google位置情報の利用 | 名前 | Googleサービス |
セットアップ完了 |
余談になるが、この機能は、筆者のようなライターにも非常にありがたい新機能と言える。例えばNexus 7の記事を書いた時は、一通り自分の環境を作り込み、ある程度使い感触をつかんだ上で、画面キャプチャなどを撮影する用に一旦リセット。初期出荷状態に戻している。
メーカーから借りている場合は問題無いが、自分で購入した機材については、入稿後、また元の環境へ戻すと言う悲しい作業が待っている(笑)。しかしAndroid 4.2なら新規ユーザーを作り、全てを処理し終了後はユーザーを削除すればOKだ。その間もオリジナルのユーザーでログインすれば普段通りに使うことができる。「1人マルチユーザー」と言うわけだ。一般のユーザーでも、仕事とプライベートで環境を分けるのもありだろう。
Android 4.1.xと4.2での標準搭載アプリの違いは、友だちの現在地を確認できる「Latitudeアプリ」の有無となる。これに伴い「Latitude・ウェジェット」が無くなっている。逆に増えたのは「デジタルクロック・ウェジェット」。また「アナログ時計・ウェジェット」もデザインが変わった。
起動直後のホーム画面1 | 起動直後のホーム画面2 | 初期状態のアプリ。Latitudeが無い |
ウェジェット1/5。アナログ時計のデザイン変更。デジタルクロックの追加 | ウェジェット2/5 | ウェジェット3/5 |
ウェジェット4/5 | ウェジェット5/5 |
同じ環境を1台のデバイスの中に複数作り込むため、画面キャプチャからも分かるに、ユーザーの数だけストレージが余分に使われることになる。また一部のプロセスやサービスも動いたままのようだ。従ってこの機能を使いたい場合は、ストレージはできるだけ大容量の方が良いだろう。ただし、何をどれだけ使っているのかは他のユーザーからは分からなくなっている。
感心したのは、PCからUSBで接続した時にも、アクセスできるストレージがログインしているユーザーによって内容が変わることだ。これによって、本体を操作した時の機密性だけでなく、PCを使ったデータのやり取りも、ユーザー毎にプライバシーが保てる。
ストレージにその他のユーザーが使っている領域も表示される | 他のユーザーのプロセスやサービスも若干動いている |
PCへUSBで接続した場合、ログインしているユーザーに応じてマウントされるドライブの内容が変わる |
ここからは単なる筆者のかなり個人的な見解となるが、長らくNexus 7を使い、久々にiPadへ戻るとどうも物足りなく感じる。ホーム画面で何も動いてないのが原因のようだ。また最近Windows Phone 7.5も少し触っているが、Windows 8も含め、ライブ・タイルと呼ばれる、アイコン兼ウェジェットのような見せ方でアイコンの中に動きがある。つまり何も触っていないホーム画面でも、ある程度欲しい情報を得ることができるのだ。
ところがiOSは更新や新着があった場合、赤丸に数字があるだけ、文字情報は一切無く、詳細は通知領域で確認することになる。バッテリ駆動を考えるとこちらの方がより省エネなのかもしれないが、あの広い画面に単にアイコンを配置するだけでは、何かもったない感じがしてきた。
加えてAndroid 4.2ではマルチユーザー対応となり、1台のデバイスを複数人で使う事が可能になった。また少し実装は違うものの、日本未上陸のWindows Phone 8でも、他人が使うことをある程度配慮した機能がある。「キッズコーナー」と呼ばれ、あらかじめ使っても良いアプリやビデオ、音楽などを設定しておけば、ロック画面を横へスワイプするだけで、設定されたアプリなどが並ぶ仕掛けだ。発表会の映像でも子供がステージに上がってこの機能を強調するデモが行なわれた。
スマートフォンやタブレットは基本的に個人が所有する物だが、場合によっては周囲の人が使いたいケースもある。これに対応する機能が必要になり実装した形だ。
この2つの機能は現在iOS 6.xは未実装。どちらも対応するとなると、結構大掛かりな仕様変更だろう。今後どうなるのか個人的には注目している。
以上のようにAndroid 4.2は、細かい部分の修正/追加に加え、マルチユーザーに対応した新しいバージョンだ。特にタブレットの場合、所有者のみが唯一のユーザーとは限らない事が多くこの機能は重宝しそうだ。
現在使用可能なデバイスはNexus 4/7/10と限られているが、アップデートを期待しているユーザーも多いのではないだろうか。