Google、「FLoC」を諦め「Topics」を提案 ~Cookie追跡に代わるよりよいWeb広告の仕組み
米Googleは1月25日(現地時間)、「Topics API」を発表した。「FLoC」の実験で得られた知見と、コミュニティから寄せられたフィードバックを元に開発された新しいAPIで、これまでCookieの代替技術として試験運用されていた「Federated Learning of Cohorts」(FLoC)を置き換えるものだ。
「Google Chrome」で試験提供されている「プライバシー サンドボックス」の設定画面ターゲティング広告は無料コンテンツの供給に欠かせない技術だが、一方でこの技術はユーザーのプライバシーを蔑ろにしてきたといえる。その反省から、業界は足並みをそろえてサードパーティーCookieのサポート廃止を段階的進めるとともに、収益の確保とプライバシー保護のバランスをとる方法を模索してきた。Googleの場合、「プライバシー サンドボックス」(Privacy Sandbox)とそのアルゴリズム「FLoC」がそれに当たる。
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「FLoC」つまり「Federated Learning of Cohorts」」は機械学習でユーザーの閲覧履歴を分析し、同じような興味や関心をもつ何千人ものユーザーとまとめて「Cohort」(コホート:群れ)を形成する。広告主から要求できるのはどのコホートに属しているかだけで、個人の・具体的な閲覧履歴は共有されない。
しかし、「FLoC」の概念は難解で扱いにくく、また新たなフィンガープリント(個人を追跡するために利用される指紋データ)をWebブラウザーに追加するだけではないかという指摘もあった。実際、「FLoC」に追随しようとするWebブラウザーは存在しない。また、当初組み込む予定だった「Federated Learning」に関しても、デバイス上での計算で十分な実用性と優れたプライバシーが得られることがわかったという。
「Topics API」はこうした反省をもとに再構築されており、より分かりやすく、フィンガープリントへの悪用が難しく、ユーザーの選択権を尊重した透明性の高い仕組みになっているようだ。
「Topics API」では、閲覧履歴をもとにユーザーの興味・関心事を表す「トピック」――たとえば「フィットネス」や「旅行・交通」――を毎週選択する。この処理は外部のサーバーを介さず、すべてデバイス上で行われる。
サードパーティーCookieでWebサイトに好き勝手にユーザーの興味を推測させるのではなく、Webブラウザー側で管理して「Topics API」で提供するトピックは最終的に数千個になる見込みだが、初期段階では約350個になるようだ。また、人種や性別といったセンシティブな情報はトピックに含まれないよう配慮されている。
トピックベースの広告を運用するWebサーバーへ接続すると、「Topics API」は過去3週間から合計3つのトピックを選んでそのサイトと広告パートナーと共有する。トピックの選択やサーバーへの提供に際しては、ユーザーの特定を防止するための処理(ランダム化やノイズの追加)も行われるという。
「Topics API」を利用したコードの例なお、実際にどんなトピックが共有されるかは、ユーザー側で確認が可能。気に入らないトピックを削除したり、トピックそのものを無効にするユーザーコントロール機能も提供される。
同社は近いうちに、「Google Chrome」に「Topics API」関連の機能を追加し、開発者向けのトライアルを行いたい考え。ユーザーコントロールの最終的な設計やAPIの動作に関しては、トライアルで得られた知見やフィードバックを元に改善していきたいとしている。