ブロックチェーンの技術を車にも、デンソーがウェビナー「DENSO Tech Links Tokyo #12」を開催
QRコードにブロックチェーンのQRコードを埋め込んでトレーサビリティ
1つめの講演は、まちづくり企画室 情報トレサビ開発課の岡部達哉氏による「デンソーにおけるブロックチェーンへの取り組み」だ。
冒頭で岡部氏はデンソーの事業領域を紹介した。車載領域から、MaaS・物流・食料品・ロボット領域に広がり、「『モノビジネス』から『モノビジネス+コトビジネス』へ変革したいと思っている。そのために必要なのがデータで、データの安全を確保するためにブロックチェーンに取り組んでいる」と語った。
デンソー まちづくり企画室 情報トレサビ開発課 岡部達哉氏なぜデンソーがブロックチェーンなのかまずは改めてブロックチェーンとは何かについて。岡部氏は「ブロックチェーン=仮想通貨、ではない」ことを強調した。
ブロックチェーンは、2008年にビットコインを支える技術として提唱した。近年ではデータが改ざんできない技術として仮想通貨以外の領域で活用が広がっている。
ブロックチェーンは主に3つの技術からなる。ブロックに前ブロックのハッシュ関数を入れた「ハッシュチェーン」、情報を共有する「分散台帳」、マイニングのための「合意形成アルゴリズム」だ。
自動車業界の動向を見てみると、フォルクスワーゲン、ルノー、BMW、ボッシュ、フォード、ダイムラーが、それぞれ内容は異なるがブロックチェーンに取り組んでいることを岡部氏は紹介した。
ブロックチェーン技術とは他社・他国の動向続いてデンソーがブロックチェーンで目指す姿について。
岡部氏はデンソーが解決したい社会課題を、トレーサビリティ(トレサビ)とデータ管理の2つに分けて紹介した。トレーサビリティには、強制労働管理、電池トレサビ、CO₂、商品・製品偽装、HACCP(温度管理)がある。また、シェアリング(個人間契約)、シェアカー時代の保険、EV時代の税収確保(マイクロペイメント)がある。このうちトレーサビリティについては岡部氏の講演で、データ管理は徐氏の講演で説明される。
デンソーが目指す方向としては、「クルマまわりブロックチェーンプラットフォーマになり、安全・安心なクルマまわりのサービスを提供可能とする」ことを岡部氏は掲げた。
デンソーが解決したい社会課題デンソーが目指す方向性ここからトレーサビリティについての話だ。トレーサビリティとはたとえば「いま食べているハンバーガーの原材料はどこから来たか」が分かることだ。
そのための技術課題と解決手法を岡部氏は語った。まず、トレサビの情報をいかに改ざんから守るかということについては、ブロックチェーンを活用する。情報と製品・商品の一致をいかに図るかについては、QRコードやバーコードを活用する。導入コストを下げるためにいかに既存流通システムに付加するかについては、既存流通システムを生かして特殊なQRコード、バーコードを導入する。
続いて実際に作っているシステムの概要だ。材料を作る会社は、企業または製造元の情報をブロックチェーンに入れておき、さらにその情報と製造履歴をタイムスタンプとともにブロックチェーンに入れて、ハッシュ値をQRコードにして印刷し、材料に貼って加工会社に送る。受け取った加工会社は、それぞれの材料のQRコードを読み取り、自社の情報をまじえてブロックチェーンに送る。
また、既存の流通のサプライチェーンシステムを生かすために、特殊なQRコード・バーコードを導入する。これは、既存システムのQRコードやバーコードの空きスペースにブロックチェーンのQRコードを埋め込むことで、既存システムをほぼそのまま使えるようにするものだ。なお、QRコードはデンソー子会社のデンソーウェーブが開発した技術である。
最後に岡部氏は、トレーサビリティーの応用として、コールドチェーン(温度管理システム)やカーボンフットプリントのアイデアを紹介した。
提供したい価値と、技術課題と解決手法トレーサビリティシステムの概要特殊なQRコード・バーコードトレーサビリティの応用