【懐パーツ】100MBの容量を実現したリムーバブルディスク「Iomega Zip」
今回ご紹介するのは、友人から譲り受けたIomega製のリムーバブルディスク「Zip」と、パラレル接続のZip対応ドライブ「」である。
ZipはIomegaが1994年に発売したリムーバブル磁気ディスクメディアである。富士フイルムが開発した高記録密度メディア「Advanced super Thin layer & high Output Metal Media」を採用することで、100MBという容量を実現した。
当時、既に国内では容量128MBと230MBを実現したリムーバブルディスク「MO」(光磁気ディスク)が普及していた。MOはディスクへの書き込みの際にデータ消去、記録、検証という3つの手順を踏む必要があったため速度が遅かった(後に消去と記録を同時に行なうダイレクトオーバーライト技術が登場)。しかしZipではこれらの手順が必要ないためMOと比較して高速だった。シークタイムも平均28msとされており、ランダムアクセスも速い。
当時のZipメディアの価格は容量で割るとさほどでもないが、絶対単価が安めで、何よりもドライブ自身が安価であったと記憶している(15,000円程度)。本体を分解すれば分かるが、組み立てで使うネジはトルクスネジわずか1本のみと驚異的である。ディスクのリテンションメカニズムとユニット自体は上下のカバーに挟まれ固定されているだけで、そのカバーの固定もツメによる嵌め込み式だ。訓練された人であれば1分で組み立てられるほどシンプルにできており、これが安価であるゆえんだ。
Zipのメディアディスクの上部に穴があり、ヘッドがここから挿入されるの前部ドライブの右側面にDC入力があるドライブの背面。パラレルポート接続で、プリンタも接続できるようになっている底面に簡単な説明書きが用意されているラベルに内容を書いておけば、挿入したままでもラベル内容が確認できる窓がついているドライブを分解したところ。ネジは使われていない左右の爪だけでカバーが固定されているフロントベゼルを取り外したところドライブユニットがレールパーツの上に載っているが、このレールも本体の穴に載っているだけである本体内部ネジはこの基板固定用のトルクス1本のみ基本的に専用部品が多いので1個ずつ追わないが、Adaptec製の「AIC-7110Q」やiomegaの「PHAEDRUS」は本来SCSI接続が可能なチップであり、本機ではわざわざパラレルから変換されているようであるユニークなディスクリテンションシステム。メディアが挿入されないとリテンションが後部に移行しないようになっているメディアが挿入されるとロックが解除され、リテンション全体が後部にスライドできるようになるメディア挿入とともにくの字型のバーが保護カバーを開けるようになっているヘッドに近づくと保護カバーが開く奥までセットするとヘッドが挿入できるようになるは多数の接続インターフェイスのバリエーションモデルがあり、一番基本となるのが今回ご紹介するパラレルポート接続のモデルである。もちろん、PCとの接続インターフェイスはパラレルポートだ。電源はACアダプタを利用するが、今回譲り受けた際にACアダプタがなかった。しかし5V/1Aで駆動するので、千石電商などで販売されているUSB→DC 外径5.5mm/内径2.5mmタイプの電源供給ケーブルを買えば、USBバスパワーまたはUSB ACアダプタで駆動させられる。
Windows 95/98/Me/NT 4.0/2000では、専用の「IomegaWare Tools」をインストールして認識させる。一方、Windows XP以降はこのツールが使用できない代わりにOSが標準でサポートしているが、使うためにはデバイスマネージャのパラレルポートの設定で「レガシ デバイスのプラグ アンド プレイ検出を有効にする」のチェックを入れる必要がある。
のライトプロテクトやパスワード保護機能に関しては、ソフトウェアによって実現されているため、IomegaWare Toolsが使用できないWindows XP以降ではこの機能がサポートされない。
USBから外周5.5mm/内周2.5mmのDCプラグ変換ケーブル。千石電商で200円これを使えばをUSBバスパワー駆動にさせられるWindows XPでは、プリンタ ポートのプロパティで「レガシ デバイスのプラグ アンド プレイ検出を有効にする」にチェックを入れれば自動的に認識されるちゃんとのアイコンも用意されている(これは250MB版Zipをモチーフとしている)ゴミ捨て場に捨てられていたThinkPad T42を拾って手入れし、認識させてみたWindows Vistaは不明だが、Windows 7では上記の設定項目を有効にしてもドライブが認識されなかった。おそらくWindows 8.1や10でも、このは使用できないのだろう。しかし実はこれはパラレルポート接続のサポートがカットされただけで、Windows 10としてはをちゃんとサポートしている。千葉県のとあるハードオフで590円で売られていたUSB接続のを購入し接続したところ、Windows 10でも認識できた。これで「原稿をZip(物理)で送ります」と言われても安心できる(注:本気で送らないでください)。
とは言え、今USBのを購入できる可能性は低い。だが手持ちのZipを読みたいのなら、完全に諦める必要はない。2016年10月時点、日本で一番安く売られているマザーボードであるASRockの「AM1B-ITX」(新品、価格コム調べ)には、“パラレルポートを備えつつWindows XPを公式サポートしている”という特徴がある。最安のSempron 2650さえ買えば、手持ちのパーツを流用して安価にZipの中身を読むシステムを構築することはたやすい。なお、AM1B-ITXはもう間もなく生産終了になる。
日本最安のマザーボードAM1B-ITXはAM1プラットフォームで、パラレルポートを備えつつWindows XPをサポートしているまさか2016年でZipを読みたいがためにAM1B-ITXを使う人間が現れようとはさすがの変態ASRockも想定していなかったことだろう(いや、パラレルポートを付けたということは想定していたのか!?)ちなみにこのUSBタイプのはスケルトン仕様で内部が覗けるようになっている。内部構造は基本的にパラレルポート接続と共通化しており、組み立て方式もほぼ同じだが、完全にネジがない構造で、100%ツールフリーで組み立てられるほどのシンプルさを持つ。
ただし今回は非常に残念なことに、譲り受けたZipメディア自体がもうダメのようで、アクセスしてフォルダが見えたものの読み出せなかった。フォーマットも試みたが、不良セクタの認識が多発して完了せず、このまま完全に使えないメディアと化してしまった。保管環境が悪かったのかも知れないが、メディアの寿命としてはMOに及ばなさそうである。
千葉県のとあるハードオフで購入したUSB接続のインターフェイスはUSBになっている筐体構造は基本的にパラレル版と共通全てがツールレスで組み立てられるという驚くべき構造ディスクユニットの一部もスケルトン仕様取り出した基板これも深追いはしないことにするZipを開発したIomegaは2008年にEMCに買収されたが、2012年のEMCとLenovoとの提携の際、Iomegaの資産がLenovoとの合弁会社に移行した。そのためIomegaブランドおよびサポート情報は現在Lenovoのサイト上にある。一方、EMCは先日Dellに買収されている。
なお、全世界的に見ればZipの普及率はMOやPDやSuperDiskなどと比較して高いが、日本国内では官公庁や出版業界などでMOが多く使われたため、MOの方が普及率が圧倒的。2016年10月現在もなお、社内でMOディスクの存在を余裕で確認できるほどで、置いてある編集部に尋ねたところ「まだ印刷所とのやり取りで普通に繰り返し使ってますが、何か?」と言われてしまった。