【直6かV8かはお好みで】ジャガーXJR(X300系) 驚きの高性能 英国版クラシック・ガイド 後編
V8エンジンは内部の樹脂部品に注意
text:Malcolm Mckay(マルコム・マッケイ)photo:James Mann(ジェームズ・マン)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)X300系のジャガーXJRに載る、AJ16型と呼ばれる直列6気筒エンジンはかなり堅牢。しかし後期で登場したV8エンジンは、当初いくつかの弱点を抱えていた。対策は不可能ではない。
硫黄成分が多いガソリンを用いると、ニカシル合金のボアライナーを傷める。修理は高額だが、多くは保証期間中にスチール製のボアライナーに交換済みのはず。近年は硫黄成分が少なく、同じ不具合は発生しにくい。
同時期のV8エンジンでは、ウォーターポンプ内にプラスティック製のインペラー(羽根車)が用いられ、破損するケースが少なくない。交換がまだなら、対策品に新調したい。
タイミングチェーン・テンショナーもプラスティック製で、破損すると壊滅的なダメージを与える。カムカバーを取り外すと状態を確認できる。予防的に交換しておいた方が無難だろう。これらを解決すれば、V8エンジンも安心して楽しめる。
ZF社製のMTが組まれたX300型XJRの製造は、102台のみ。後期のX308型にはMTが用意されなかった。ATの寿命を伸ばすうえで、フルードとフィルターの交換は必要。フルードの黒ずみや焦げ臭さがないか、予め確認しておきたい。
ATはほかに、電子的な不具合で故障する場合もある。ディファレンシャルのフルードも、定期的な交換をオススメする。
中古車を購入する場合、予めすべての油脂類と、サブフレームやサスペンションのブッシュ類の交換費用は想定しておきたい。必要に応じてダンパーやボールジョイントも交換すれば、クルマのフィーリングが一新する。
ブレーキは基本的に素晴らしく効く。V8エンジン版の方が強力だが、直6の方でも充分なほど。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
オールアルミのAJ16型、直列6気筒エンジンは24バルブでほぼトラブルフリー。16万kmを過ぎたら、タイミングチェーンのガタツキには注意したい。適切に維持していれば32万km前後は余裕。
V8エンジンは直6よりパワフルだが、タイミングチェーン・テンショナーのほか、ウォーターポンプとサーモスタットが弱点になる。
イートン社製のスーパーチャージャーが、XJRの高性能を支えている。スーパーチャージャー自体のオイル交換が必要だが、見落とされている場合も。交換履歴は確かめたい。
駆動系統
前期型のX300型はGM社製のトランシミッションで、後期のX308型ではメルセデス・ベンツ社製が用いられている。完全密封されたユニットだが、定期的にフルードとフィルターの交換は済ませたい。X300型ではMTも選べたが珍しい。
トランシミッション・フルードが黒く濁っていたり焦げ臭かったら、リビルド時期のサイン。デフからの異音はシリアスな問題ではないが、フルード交換で治ることがある。
サスペンション
サスペンション各部のブッシュとショックアブソーバー、サブフレーム・マウントのゴムは劣化しやすい。アルミ製の部品は、腐食や衝突によるダメージがないかも確かめたい。
ボディ
サイドシルにフロア、フロントフェンダーの後端、リアホイールアーチ内、各ピラー、フロントサブフレームとマウント、ドア下部、フロントガラス下端のゴム周辺などがサビの注意ポイント。
インテリアと電気系統
X300系のインテリアは、先輩のXJ40系がベース。後期型では更新を受けている。シートの摩耗や天井の内張りの剥がれ、ウッドパネルの劣化などがないか観察したい。
電子制御関係は複雑で、問題が起きると手間がかかる。すべてが正常に機能し、警告灯がエンジンの始動後に消えるかは事前に必ず確かめたい。
ジャガーXJR(X300系)のまとめ画像 高性能サルーン ジャガーXJR(X300系) 直近のXJRとXE プロジェクト8も 全62枚