栄枯盛衰…10年でマザーボード市場のシェア2位から転落のギガバイト 躍進するASRockとMSI
マザーボード市場でギガバイトのシェアが急落。一体何が起きているのか
BCNは1月中旬、2021年(1~12月)の年間販売台数シェアでトップを獲得したベンダーを称える「BCN AWARD 2022」の各受賞メーカーを発表。マザーボード部門では17年連続19回目として、ASUS JAPANがトップに輝いた。マザーボード部門は過去23回、BCN AWARDの表彰対象部門となっているが、ASUSはこの間、4回ほど受賞を逃している。そのうちの3回はBCN AWARD 2003~2005でトップに輝いた日本ギガバイトだった。マザーボードのシェア争いで一体何が起きているのかを振り返ってみよう。 ギガバイトはかつてASUSとBCNランキングの販売台数シェアで1位、2位を争ったこともある有力マザーボードメーカー。取扱製品はデスクトップPC、ノートPC、マザーボード、グラフィックボード、LCDと多岐にわたる。BCN AWARD 2003~2005のマザーボード部門で3回にわたりギガバイトがトップシェアを獲得。しかし、2010年以降はASUSが優勢のまま、ギガバイトが後を追う流れが続いていた。 潮目が変わったのは2015年だった。それまでギガバイトはPCパーツの販売代理店契約をシー・エフ・デー販売とリンクスインターナショナル、マスタードシード(現在は事業停止)の3社と結び、PCショップに商品を流通していた。 これは各代理店ごとに納入先の取引販売店・PCショップが異なり、各社で分担しながらギガバイトのマザーボード製品をPCショップ全体に流通させる狙いからだった。だが15年3月、シー・エフ・デー販売およびマスタードシードと代理店契約が終了すると、翌16年12月にはリンクスインターナショナルとも代理店契約が終了となる。 代わって販売代理店になったのが旭エレクトロニクスだ。ギガバイトと旭エレクトロニクスは、15年3月のシー・エフ・デー販売とマスタードシードの両社との代理店契約終了とほぼ同時に代理店契約を結んだ。 元々インテル製CPUの流通に携わりPCパーツの流通に長けていたはずの旭エレクトロニクスだったが、15年を境にギガバイトの販売台数シェアは下降線をたどった。14年に28.9%あったギガバイトの販売台数シェアは、15年には17.3%、リンクスとの代理店契約が終了した16年には12.8%、17年の1社代理店体制以降は1桁台になるなど、わずか4年の間で急落した。17年以降は、かつて首位争いを繰り広げていたASUSはもとより、ASRockやMSIにも水をあけられている。 代わってASRockとMSIは15年以降シェアが急伸。ASRockは19年に同社で過去最高の32.6%のシェアを獲得。MSIも21年は同社で過去最高の21.2%となり、過去最低だった12年のシェア3.2%から約7倍も躍進している。 ギガバイトのシェアが激減した理由として、今までASUSに次ぐ2位企業だった製品の品質が極端な改変・品質劣化を招いたとは考えづらい。やはり代理店戦略の変更、ひとえに旭エレクトロニクスへの1社集中体制への負担が大きかったのではないか。 21年は2ヵ月ほどだがASRockがASUSを抜いて1位になるなど、マザーボード市場は上位陣が激戦を繰り広げている。ギガバイトには流通面の対策を講じ、かつての活気を取り戻してほしい。(BCN・栃木 亮範)*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。