Society5.0時代における未来の学び (仮想と現実) InfoComニューズレターの顧客情報の保護について
未来の教育はどうなっていくのか。今年で30年目を迎える小学校教師を主人公に、「Society 5.0」時代における近未来の教育現場を想像してみたい。
朝、6時に起床し、朝食を食べた後、いつものように学校へ向かう。変わらぬ日常だ。
学校へ着いた私はいつものように職員室のデスクに座り、授業の準備を始めた。その瞬間、違和感を覚えた。何かがいつもと違うのだ。まず、いつものデスクラックに出席薄がないことに気づいた。そもそもデスクラックがないのだ。それから、教科書や筆記用具もない。デスクにあるのは、タブレットとタッチペンのみだ。
一体、何が起きたのだろうか。昨日までの職員室とは何かが違う。いや違いすぎるのだ。
周りの教師たちは、何の変化も感じていないのだろうか。タブレットを片手に次々と教室に向かい始めた。
そういえば、数週間前に校長から、「今後の授業、学校運営はすべてデジタル化されます。皆さんもしっかりと準備をしておいてください」と言われていたことを思い出した。
そう、学校のすべてがデジタル化されているのだ。
私は、戸惑いを感じながらも、教室へと向かった。教室に着いた私は目を疑った、黒板がなくなり、その代わりに大スクリーンがあり、そこには、35人の子供たちが投影されているではないか。子供たちは学校へは登校しているが、好きな場所で授業を受けていいことになっていたのだ。残念ながら、私の授業を教室で受ける児童は一人もいなかった。
タブレット画面には、クラウド上に格納されているデジタル教科書と補助教材の一覧が示されている。IDと顔認証でアクセスする。子供たちはタブレット画面から授業を選択して、インターネット上で教室へ入室する仕組みだ。
こんな教育現場の世界は、すぐにやってくるのではないだろうか。
「Society 5.0」が提唱され、5年が経過し、その実現に向けて、官民が一体となった取り組みが展開されており、教育界においても、デジタル教科書の導入、GIGAスクール構想など、学習様態の変化を伴う取り組みが加速している。
日本の未来にとって必要となる教育とは何か。本稿では、「Society 5.0」の実現に向けた国の政策や科学技術の動向を踏まえ、教育の未来を考察していきたい。
「Society 5.0」の目指す社会とは
「Society 5.0」は、2016年に「第5期科学技術基本計画」[1]で提唱された。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合されたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、「人間中心の世界」で、我が国が目指すべき未来社会と位置付けられている。
2021年3月に閣議決定された「第6期科学技術・イノベーション基本計画」[2]においても、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会として、引き続き、取り組んでいくことが明示されている。さらに、Society 4.0(情報社会)の限界の露呈、デジタル化への対応の遅れも指摘され、実現に向けた具体的な施策が提示されている。
また、「Society 5.0」の実現に向けては、プラットフォームの構築、データベースの整備、基盤技術(AI、IoT、ビッグデータ処理技術等)の強化の重要性が示されており、これらを支える技術として、5Gの普及・整備に対する期待は大きく、ローカル5Gを含めた実証が行われている。
教育界においても、2018年、文部科学省は、「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」[13]を取りまとめ、Society 5.0において求められる人材像、学びの在り方、取り組むべき施策等が示された。
教育界以外でも、関連施策として、デジタル・ガバメント実行計画、スーパーシティ・スマートシティ構想、都道府県官民データ活用推進計画、自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画、産業界におけるDXなど、次々と施策が打ち出されている。
しかしながら、地方公共団体、一般企業等においては、何をどうしていいのか、何をすべきかなど、戸惑いや不安視する声も聞かれるといった現状がある。
【図1】Society5.0の社会(出典:内閣府HP)
また、「Society 5.0」の国民の認知度は低く、2019年時点において、知らないと答えた国民は87.1%との結果[4]もあり、今後、関連施策の実行と国民への浸透を図っていくことが求められる。
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※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。
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