楽天モバイル矢澤副社長に聞く、2021年秋のローミング切り替えとこれからのエリア構築
地下の店舗専門のチームで
ここまでが、矢澤氏が主張する楽天モバイルの取り組みだ。しかしまだまだ疑問はある。より深い説明を聞くため、ここからは矢澤氏との一問一答をお届けする。
――半年前にも矢澤さんにインタビューする機会をいただきましたが、職掌は引き続きエリア拡大の担当ですか?
矢澤氏はい、そうです。
一方で、新規契約が増えるほど、ローミング費用の支払いも増えている現状がありました。つまり、(獲得スピードをコントロールするため)アクセルとブレーキの両方を踏みながらマーケティングを進めてきたところだったのです。
しかし、今回、ローミングの切り替えを大規模に実施するということで、あまりブレーキを踏まず、新規契約の獲得施策を進められることになります。つまりショップ展開も拡大していこうと考えています。あわせてお客さまへの対応もかなり重要になってきています。そのため私がそのショップとお客さま対応も担当することになりました。
――あ、そうなのですね。ショップのことは後ほど質問させてください。ローミング費用については、8月の決算会見でも三木谷さんが発言されていました。エリア拡大はやはり一番注力されてきたポイントだと思うのですが、どういった点に力を入れてきたのでしょうか?
矢澤氏基地局は3万局を超えましたが、実はさらに1万局、部品待ちの場所があります。
半導体が必要なひとつの部品があるのですけど、それ以外はもう既に完成しているというアンテナ、設備が1万局ぐらいあるのです。
――先日、半導体不足で人口カバー率96%の達成時期を延期すると発表していましたが、すでに93%に達しているとのことですよね。このインタビュー前に想像していたよりも伸びていると感じているのですが、今準備中の1万局での展開も、見通しは明るいのでしょうか。
矢澤氏はい、これから年末にかけて、かなりの数の半導体が入ってくる予定です。96%という目標はかなり近い将来に達成できる数字と見ています。
――なるほど。
矢澤氏開通済3万カ所に加えて、半導体待ちの1万カ所があります。そして、さらに8000カ所、土地のオーナーさんと契約を交わして用地として確保できている場所があります。
これらを合算すると5万局近く、置局の目処がついている状況です。
先述した半導体の補充で、年末~年明けにかけて、基地局が仕上がっていく。
一方で、地下の飲食店などで繋がらない、楽天ペイで決済しようとしても繋がらないというお声をいただいているのも事実です。
地上の屋外局の目処が立ってきましたので、今年8月から約300人の「地下店舗専門」のエリア対策チームを立ち上げました。
そのチームは、今だいたい一日300軒~500軒、最大で800軒ほどのお店に飛び込みで「Rakuten Casa」のようなスモールセルの設置を交渉しています。まだ着手したばかりの取り組みですが、都内で地下にあるレストランは約1万件程度だと推計しており、2020年下期~2021年上期にかけて、徹底的に改善していこうと。
――「楽天ペイを使おうと思ったら圏外だった」という声があると思います。地下の飲食店でのエリア拡充は、楽天ペイ対応店舗の拡充を含めた計画なんでしょうか。
矢澤氏約300人のスペシャルチーム立ち上げでは、楽天グループ内でも特に2つの部署から助けてもらっています。
ひとつは「ぐるなび」です。レストラン予約で知られるサービスですが、「ぐるなび」チームからハイスペックの人をお借りしました。
もうひとつが「楽天ペイ」のチームです。すでに楽天ペイ導入済みの店舗だけではなく、未導入の店舗にも働きかけていきます。
――なるほど。そうした店舗ではRakuten Casaでエリアを作るということですが、導入する店舗のうち、個人店のような中小の店舗では、たとえば楽天モバイルを契約すれば月額利用料を割り引く、といった施策も実施されるのでしょうか。
矢澤氏それはありえます。十分ありえます。何かしらベネフィットがないと行けないと思います。今、ある程度、そういったもの設計しているのですが、「楽天モバイルに加入いただけるなら3カ月、◯円にします」といった互いにメリットのある形は十分ありえます。
ただ、Rakuten Casaをつなげる光回線については、かなり敷設済のところが多いんですが、稼働していないところもかなりあります。