高性能・高セキュリティなのにお手軽なWi-Fi 6ルーター「HUAWEI WiFi AX3」
ファーウェイから、Wi-Fiルーターの新製品「HUAWEI WiFi AX3」が発売された。Wi-Fi 6に対応した最新モデルだが、エントリーモデルながら、速度や安定性、セキュリティ、さらには使い勝手を向上させる独自技術が充実した注目の製品だ。Wi-Fi 6環境に積極的に乗り換えたくなる魅力的な製品に迫ってみよう。
昨年末(2019年12月)にリーズナブルなWi-Fi 5対応の「HUAWEI WiFi WS5200」で、国内の家庭向けWi-Fiルーター市場に参入したファーウェイから、新たなモデルがリリースされた。
「HUAWEI WiFi AX3」と名付けられた新製品は、現在のWi-Fi製品市場で主力となりつつあるWi-Fi 6ことIEEE802.11axに対応した製品だ。2.4GHzと5GHzのデュアルバンドに対応した製品で、2ストリーム160MHz幅の通信に対応し、最大3000Mbpsの速度を実現可能となっている。
Wi-Fi 6対応のルーターは、登場当初はハイエンド、ゲーミング市場向けの高額な製品が中心だったが、昨年あたりからミドルレンジ、エントリーの製品の投入も目立つようになってきており、価格的にも手の出しやすいレベルに下がってきている。
本製品も、こうしたエントリー~ミドル層をターゲットとした製品であり、ファーウェイならではの独自技術が満載されているのが見どころとなっている。
詳細は後述するが、ポイントとなるのは次の3点だ。
つまり、単にWi-Fi 6のリファレンスに従うだけでなく、実際の利用シーンでユーザーのメリットが最大化されるように、最新技術を搭載した製品ということになる。誰でも最新技術を手軽に手に入れることができる注目の製品といえるだろう。
それでは、実機を見ていこう。
サイズは約225×約131.9×約30.9mm(アンテナを除く)で、最近のWi-Fiルーターとしては十分にコンパクト。本体が思った以上にスリムで軽量なうえ、ホワイトでシンプルなデザインとなるため、通信機器らしくない清涼感すら感じさせられる。
アンテナは外付けタイプが4本搭載されているが、こちらも控えめな長さとなっているうえ、可倒式となっているため、まったく邪魔に感じられない。最近のWi-Fi 6対応機は、アンテナのサイズが本体に対してアンバランスに長い場合があるが、本製品は、全体的にまとまりのあるデザインとなっており、好印象だ。
インターフェイスは、背面に用意されており、LANポートはWAN×1、LAN×3ですべて1000Mbps対応となっている。
本体前面には、動作状況を示すLEDがひとつだけ搭載されており、状況によって色や点滅方法が変化する。
たとえば、通常時は緑色に点灯しているが、インターネット接続が失われると赤に変わるなど、ひかえめながら実用性を損なわないような工夫がなされている。無駄に点滅しないため、夜間などでもLEDが気になることはないだろう。
設定や管理も簡単で、設置後に、標準で設定されている暗号化なしのSSIDに接続後、「HUAWEI AI Life(Android)」または「HUAWEI SmartHome(iPhone)」アプリからインターネット接続や暗号キー、設定画面のパスワードなどを簡単に設定できる。
海外製のルーターということで、設定や管理に不安を感じる人もいるかもしれないが、本製品は比較的初心者でもわかりやすい設定となっている。初期設定後の管理もアプリやブラウザから可能となっており、現在の状況の確認や各種設定の変更が可能だ。
Androidのみ対応の「HUAWEI AI Life」アプリやブラウザから初期設定や設定後の管理ができる
対応する規格は、冒頭でも触れたとおり、Wi-Fi 6ことIEEE802.11axだが、本製品はファーウェイ独自の「Wi-Fi 6 Plus」に対応している。
基本的な規格はWi-Fi 6と同じだ。2ストリームMIMOに対応し、160MHz幅の通信に対応することで、最大で2402Mbpsを実現可能となっている。
市販のエントリーモデルのWi-Fi 6ルーターの中には、Wi-Fi 6対応といっても、160MHz幅に対応せず、80MHz幅1201Mbpsが上限となる製品も少なくない。ゲーミングPCなどを中心に2402Mbpsに対応する機器が増えていることを考えると、本製品の160MHz幅対応は心強い限りといえそうだ。
160MHz幅に対応したスマートフォンやPCを利用すると、2.4Gbpsでリンクできる
一方、最大の特徴ともいえるWi-Fi 6 Plusだが、これは通信効率を向上させる技術となる。
具体的には、「Dynamic Narrow Bandwidth technology」という技術を搭載することで、遮蔽物がある場合など、信号が減衰しやすい環境下で、通信に利用する帯域幅を自動的に調整し(2MHz幅の狭帯域を利用。狭くした分、出力を上げられる)、利得を向上させることができるようになっている。
これにより、周波数帯や帯域幅、MIMOの多重化など、基本的な方式はIEEE802.11ax準拠で、しかも理論上の速度も2402Mbpsと同じながら(つまり互換性は万全)、実際に端末から通信したときの実効速度が通常のWi-Fi 6よりも高速化されるようになっている。
こうした技術の利用には、同じくWi-Fi 6 Plusに対応した端末(2020年7月時点ではHUAWEI P40 Pro 5Gが対応)が必要だが、Wi-Fi 6 Plusは、チップレベル(Gigahome650/Kirin W650)でサポートされているため、今後、同社製チップを搭載した機器の普及によって、より一般的に利用可能になるだろう。
このように、同じWi-Fi 6対応でも、ワンランク上の速度を実現できるHUAWEI WiFi AX3だが、パフォーマンスだけでなく使い勝手にも配慮されている。
前述したように初期設定が手軽なのもメリットだが、セットアップ後の端末の接続が非常に簡単にできる。
本体を正面から見て、右手前部分にNFCが内蔵されており、ここにNFC搭載のAndroidスマートフォン(※)をかざすと、画面上にWi-Fiに接続するかどうかを尋ねるメッセージが表示されるので、[接続]をタップするだけですぐにWi-Fiに接続できる。※非標準のNFCを搭載するAndroidスマートフォンでは使用できない場合があります。
Wi-Fiの接続設定は、手動から、WPSボタン、QRコード、Bluetoothなど、さまざまな方式があるが、手軽さでいえば、本製品でサポートされているNFCが一番だ。なお、もしこの機能を使いたくない場合は、OFFに設定することも可能である。
最後のポイントは高い安全性だ。
本製品は、HUAWEI HomeSecに対応しているが、これはCPUやOSレベルで実装されている独自のセキュリティ技術だ。
本製品で採用されているGigahome 650 CPUには、独立したセキュリティ領域が確保されており、OS(Harmony)や信頼されたアプリがこの領域で実行され、他のアプリからアクセスできないようになっている。
国内でも話題になることが増えてきたが、古いルーター製品、中でもファームウェアの脆弱性が修正されずに残っているモデルや安易なパスワードが設定されている機器が、乗っ取られ大規模なDDOS攻撃に悪用されるケースも少なくない。
通信機器を狙ったサイバー犯罪に対抗するには、ファームウェアのアップデートやパスワードの管理など、ある程度、ユーザーの努力が要求されるが、HUAWEI WiFi AX3では、チップレベル、OSレベルでの保護機能によって、こうした問題にも対抗する仕組みが入っているわけだ。
しかも、国際的なセキュリティ評価の仕組みであるCC(コモンクライテリア)のEAL(評価保証レベル)5が取得されており、こうした機能の設計や検証が国際基準に適合して行われていることも証明されている。
従来、Wi-Fiルーターのセキュリティというと、Wi-Fiの暗号化や管理者アカウントのパスワードなどが話題になりがちだったが、これからはルーターそのものが乗っ取られる危険まで考慮しなければならない。
本製品は、コンシューマー向けのエントリーモデルながら、こうした対策までしっかりと考えられた製品といえる。
気になるパフォーマンスだが、なかなか優秀だ。
以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にHUAWEI WiFi AX3を設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。
今回は、クライアントとして、前述したWi-Fi 6 Plus、および160MHz幅2402Mbpsに対応したHUAWEI P40 Pro 5Gと、一般的なWi-Fi 6対応で80MHz幅1201Mbpsに対応したiPhone 11を利用している。
結果を見ると、やはり近距離のパフォーマンスが抜群に高い。特に、2402Mbps+Wi-Fi 6 Plus対応のHUAWEI P40 Pro 5Gは1階で900Mbpsオーバーと有線並みの速度を実現できている。本製品はLANポートが1000Mbpsとなるため、上限が1Gbpsとなるが、この有線の帯域を目一杯まで使える超高速通信が可能だ。
長距離に関しても、非常に実用的な速度が実現できており、もっとも遠い3階の端でも100Mbpsを実現できている。無線の環境は周囲の干渉や建物の構造によって変わるため、一概にはいえないが、一般的な家庭であれば、遠くの部屋でも安定した通信ができると考えられる。
なお、iPhone 11の結果はHUAWEI P40 Pro 5Gほど高くないが、こちらも安定して通信できたほか、Intel AX200を搭載したノートPCも接続してみたが、問題なく2402Mbpsでリンクできた。
160MHz幅は広大な帯域を占有するので、環境によっては干渉が問題になる場合もあるが、やはり1201Mbps止まりの環境に比べると、かなり高速なWi-Fi環境が実現できる印象だ。
以上、HUAWEI WiFi AX3を実際に検証してみたが、実売価格で1万円(税別)を切ることを考えると、相当にコストパフォーマンスが高い印象だ。160MHz幅対応のWi-Fi 6ルーターとしても普通に安いが、そこにWi-Fi 6 PlusやHomeSecなどの独自技術が搭載されている分のプラスαの魅力が高い。
デザインもシンプルで置き場所にも困らないのも魅力で、非常に実用性の高いWi-Fiルーターといえる。