ARをソーシャルで身近な存在にするスタートアップUbiquity6、リアル空間をキャプチャ・編集・シェア可能にするアプリ「Display.land」を公開
Ubiquity6 がローンチした拡張現実アプリ「Display.land」では、周囲の世界をキャプチャし、編集し混ぜ合わせ、他の人とシェアすることができる。
このように現実世界とデジタル世界を合成することで、クリエイティブな人にとって現実はバーチャルなイメージで彩ることができるキャンバスとなる。このアプリは iOS と Andoroid で利用できる。スマートフォンの画像処理能力とフォトグラメトリを使用し、より正確に言うなら写真を解釈してつなぎ合わせることで、空間感覚を捉えて機能している。また Ubiquity6 のクラウドサーバも活用している。
Display.land があれば、カメラは世界をスキャンするスキャナーとなる。利用者は空間の中でカメラを自由に動かすことができ、Ubiquity6 のコンピュータービジョン技術がデジタル形式に再構築する。するとそれは「デジタル空間」となり、絵文字やデカール、絵筆でリアルタイムにデコレーションすることができる。その空間を自分だけのものにすることもできるし、またはスマートフォンのボタン1つでシェアすることもできる。
Ubiquity6 の CEOAnjney Midha 氏は VentureBeat のインタビューでこう述べている。
世界中の人々が、弊社が予想もしなかったことにこれを使っています。スマートフォンを持っていれば誰でも、数センチレベルの正確さで、現実世界の場所を共有できるデジタル空間に変換することができるのです。そうしたら次はその空間内で3D のインタラクティブな体験を作り出すことができます。ゲームのエンジンを使っているようなものですが、プロのゲーム開発者になる必要はありません。それを誰でも好きな人とシェアすることができます。これは弊社にできることのほんの始まりに過ぎません。
Ubiquity6 のソフトウェアはスマートフォンのカメラ、ナビ、動作検知のデータを活用する。現実世界の空間を再構成し、そこにデジタル形式で介入することができる。建築物の注釈や空間的な写真のアルバム、動きのあるシーンというようなものを作ることができ、それらは簡単な URL を使いモバイルやデスクトップのウェブブラウザ、VR 機器を通じてすぐに見ることができる。
同社はいずれさらにもっと強力な創作ツールを導入する計画だ。
弊社はゲームエンジンの最良の部分とマリアージュしました。普通はトップクラスのプロフェッショナルしか使えないマルチプレイヤーやフォトグラメトリです。人々は好きな空間をキャプチャして、それをこれまではできなかったやり方で家族や友人とシェアするということをやり始めたばかりです。弊社はアーリーアクセス版で普通の人々をゲームレベルのクリエイターへと変えてきました。そして今、その力を世界中の一般的なスマートフォンを持つすべての人々へとロールアウトしています。(Midha 氏)
クールな特徴の1つは、現実世界に AR 空間を作り出せば、それを誰かとシェアできるというものだ。
筆者はこの技術が実際に動いているデモをサンフランシスコの本社で目にした。Ubiquity6 のチームはスマートフォンのカメラとコンピュータービジョンのソフトウェアを使って同社のロビーをキャプチャし、そこに動かせるバスケットボールのゴールと動かせるボールを挿し込んだ。
私はカメラを傾けることでボールの狙いを定め、ボタンを押してシュートした。バスケットボールはゴールに向かって放たれ、私はボールがタイマー下のゴールに入るまで調整し続けなければならなかった。その間、Midha 氏は別のスマートフォンを使って同じ空間を共有していた。URL を誰かとシェアするだけで、友人も同じ空間に入ることができるのだ。Midha 氏は同じゴールにボールを投げることでそれを見せてくれた。
Midha 氏は人々が世界中からキャプチャした画像を見せてくれた。ある人は伝説的なローマのコロッセオの半分をキャプチャした。その人がこれをシェアすると、別の人が旅行に行った際に残りの半分をキャプチャすると言った。つまり、誰かがファイルを取ってそれを別の誰かとシェアすることができ、そして Ubiquity6がそれらの現実をつなぎ合わせることができるということである。人々は様々な創作物を自由に混ぜ合わせ、シェアし、シェアの功績を認めてもらうことができる。あなたやあなたの友人が、3D のオブジェやメモ、写真やリンクで、空間に注釈をつけることができるのだ。
また Midha 氏がバーチャルなウサギを自分自身に付けると、そのウサギは彼が室内を歩くのに合わせて後をついて回っていた。
基本的に弊社が行ったことは、現実世界の上にシェアできる持続的な世界を重ねたということです。使うのはスマートフォンだけですが、どのプラットフォームからでも動いているのを見ることができます。(Midha 氏)
私は自宅のリビングもスキャンした。私がぐるぐると回転するだけで、アプリが室内のすべての物のポイントクラウドを収集してくれた。最低限の量のスキャニングを終えたことをアプリが教えてくれたので、私はそのデータを処理に送った。「最大限」の量のデータを収集することもできたが、そうはしなかった。送信の際には、Ubiquity6のソフトウェアがデータを圧縮し、ネットワークや Wi-Fi を通じて送るのに重くなりすぎないようにしてくれた。
処理にはしばらくかかったが、準備ができると、それをリアルタイムで見ることができた。完成したイメージは自宅リビングの3D レンダリングだった。空白の部分もあったが、もし最大限の量のデータを集めていればその部分も埋まっていただろう。公開ボタンを押せば、それをコミュニティに公開してシェアすることもできた。
世界中の人々が、弊社が予想もしなかったことにこれを使っています。スマートフォンを持っていれば誰でも、数センチレベルの正確さで、現実世界の場所を共有できるデジタル空間に変換することができるのです。そうしたら次はその空間内で3D のインタラクティブな体験を作り出すことができます。ゲームのエンジンを使っているようなものですが、プロのゲーム開発者になる必要はありません。それを誰でも好きな人とシェアすることができます。(Midha 氏)
Midha 氏によれば、ベータ版のローンチ以降、Display.land のコミュニティマップは成長を続け、バルセロナのグラフィティアートに溢れたストリートや東京のコーヒーショップから、ロンドンの秘密の庭やソーサリトの地下トンネルまで、50か国以上の現実世界の写真が数千枚、ユーザにシェアされている。
毎日、Display.land の人々は自分が好きな空間をシェアすることで、世界中から集まったお互いの文化について新しいことを学び合っていると同氏は言う。
Midha 氏によると、大量の拡張現実を時を超えてシェアしつづける体験を可能にすることを含め、以前からこの業界の人間を悩ませてきた問題を Ubiquity6の技術が打開した。
Display.land が基としている Ubiquity6の Reality Engine はエンドツーエンドのクラウドパイプラインであり、コンピュータービジョン、機械学習、リアルタイム3D グラフィック、そして持続的でマルチプレイヤーなネットワーキングを結合している。
スタンフォード大学や Twitter、Zynga、Unity その他の出身者である Ubiquity6のチームによって作られた Ubiquity6 Reality Engine は、プラットフォーム間の互換性、大規模なシェア、そしてあらゆるデバイスによる AR と VR の持続的な体験を可能とする。
Kleiner Perkins のパートナーである Bing Gordon 氏は声明でこう述べている。
人々はゲームセンターや遊び場、スタジオのような共有できる空間に出かけ、そこで交流したり何かを一緒に作ったりするのが大好きです。インターネットが絶対にやるべきことは、そういった社会的なつながりをオンラインに持ち込むことです。大好きな空間を作り出し、それを友人とシェアし、一緒にしたいものの中に作り上げることで、Display.land はそれをかつてないほどに容易にしました。これは持続的な世界構築ゲームと現実世界の友人や空間をミックスさせたものです。
Ubiquity6 は2017年7月に Midha 氏と Ankit Kumar 氏によって設立された。
私たちは大学でスタンフォードの学部生として出会いました。そしてそれから数年は、少々違った道を歩んでいました。(Midha 氏)
Midha 氏は Kleiner Perkins でベンチャーキャピタリストとして、EA の共同設立者の1人である Gordon 氏と共に働いていた。自身が目にしたものに基づいて、Midha 氏はコンピュータービジョンや AR、AI の最も有望な一部が実を結ぶまでは、いくらかの時間がかかるだろうと考えていた。一方 Kumar 氏はいくつかのスタートアップを経験し、グラフィックプロセッシングユニット(GPU)とナビゲーション技術は急速に進歩するだろうと考えていた。
ほぼゲーム世界のサーバーのものであった、この素晴らしいグラフィックのポテンシャルが、すべての消費者にとってさらにアクセスしやすくなり始めていると彼は考えていました。彼は数センチの正確さでスマートフォンに世界を理解させる方法があると考えていました。そして今、私たちはカメラを通してお互いを、現実世界の正確な場所そのままに見ることができるようになっています。(Midha 氏)
彼らはサイドプロジェクトで一緒に働き始め、互いに間違っていたことを知った。実際は Kumar 氏の予想よりも困難なものであり、Midha 氏の予想に反して実現可能なことが分かったのだ。プロトタイプができると、彼らは新しい会社を始めた。
バスケットボールのゴールを設置すると、お互いがボールを投げるのをリアルタイムで見ることができました。そしてそれができたとき、2人が下を向いて自分のスマホを見て自分の世界で遊んでいるのとは対照的に、今やカメラを見て実際に一緒に遊ぶことができるということが、極めて意義深いことだと分かったのです。(Midha 氏)
彼らはミュージアムに赴き、150人の人々が同時に、同じ空間で、他の人が何をしているのかを見ながら、バーチャルな色で天井を塗るという展示を行った。
こういったものとしては初の体験でした。1つの空間で同時にあれだけ多くのプレイヤーがネットワークにつながるというのは。平均的なセッション時間は45分で、中にはゲームに全然興味がない65歳の人もいました。(Midha 氏)
Ubiquity6はこれまでに3,750万米ドルを調達している。投資家には Benchmark、Index Ventures、First Round Capital、Kleiner Perkins、Gradient Ventures が含まれている。同社の従業員は65名。Ubiquity6の Display.land は無料だが、いずれは高機能ツールの使用に課金したいと同社は望んでいる。
弊社の目標は、人々が物理的な世界をこういったデジタル世界へと変え、私とあなたが体験したような、シェア可能な社会的な交流をできるようにすることです。これは、普段は物理的な世界では遊び場だけで、もしくはスタジオで製作しているときだけ、サンドボックス環境の中だけで体験するものです。現在は子どもたちは現実世界でサンドボックス環境を持っています。大人は多人数オンライン(MMO)のゲームを遊ぶことでバーチャル世界にそれを持っています。ですが、それらの行為を合わせることができた人はいません。(Midha 氏)
【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】
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