メタバースと半導体。ハードが無いとサービスで勝てない? 2021年を振り返る(2)
メタバースは「ようやく形になった」。ビジネスの本格化は5年後?
--2021年はいわゆるGAFA、ビッグテックもさまざまなトピックがありました。一番思い出しやすい話題としてはFacebookがMetaに社名変更しましたが、メタバースについては西田さんいかがでしょうか。
Facebookの新社名は「Meta」。メタバース実現へ
西田:最近「メタバースとはどういうものか」という取材依頼が多くて、そのくらい注目されているのだと感じますが、実際に何かが変わったわけでもないので、あまり騒ぐのもどうなのかな、と思っています。メタバースは来年も変わらないのかな、というのが正直なところですね。
メタバースそのものは1960年代から続く概念ですが、それがようやく形になってきたように見えるレベルで、理想のメタバースになるのは2030年以降ではないかと思います。
今のメタバースは1995年頃のインターネットみたいなもので、ようやくWebができてここでビジネスができることがわかったという段階。メタバースも同じで、人がコミュニケーションして仮想空間で暮らす世界ができて、これがうまくつながることで大きなビジネスチャンスが待っていることはわかった。
ただ、1995年のインターネットというと極論すればホワイトハウスとNASAくらいだったのが、それから5年くらいでAmazonが登場してECサイトが立ち上がるなど、ある程度これはビジネスになるということがわかる時期がきた。メタバースも同じような感覚で、5年あればある程度ビジネスになることがわかる時期が来る。
さらに10年後はインターネットでいうネットバブル崩壊の頃で、その頃にはきちんとビジネスが成立していて、普通の人もメタバースを使い始めている時期になっているのだと思います。
今の段階でメタバースで何ができるかというと、ゲームだったり人と話せたり会議ができたり、そういう1つ1つができているに過ぎない。その1つ1つは重要だけれどつながってはいないんですね。それらがつながって情報や商圏が移っていく、決済して物を渡す、ということができるようになると「メタ」、上位概念としての世界になるのでしょう。
Horizon WorkroomsなぜFacebook(Meta)がメタバースをやろうとしたかというと、SNSは文字ベースのメタバースなんですね。だから空間ベースのメタバースを作るならばやらなければいけないことはわかっていて、それには時間がかかる。だからまずは走りだそうという時に、会社名を変更する必要はないんだけど、Facebookの評判が欧米で悪いので、名前も変えて新しい方向に行きます、ということになったのかと邪推しています。
--Metaへの社名変更以降、急にメタバースが世を賑わせるようになりました。
西田:何か新しいことがあったわけではないんですよね。それは今までも起きていたことで、キャッシュレス決済もPayPayのような象徴的なサービスが登場すると、今までは気にしなかった人が目にして注目するようになる。
メタバースもVRの頃から変わってはいなくて、VR界隈の人たちは「世の中を変える技術だ」と以前から盛り上がっていたけれど、そうじゃない人にもFacebookがやっているなら大きなビジネスになるだろう、という認識が生まれてきた。そうやって話題になることで山師的な人も出てきたりしていて、そこは問題だと思いますが、メタバースが注目されるためには何か象徴的な存在が必要だったんだろうと思います。