予想以上に「厳しく、細かい」改定への対処法は? 「読解力」が試される2022年度診療報酬改定
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連載をフォローフォローを解除フォロー中連載をフォロー 2022/02/18日経ヘルスケア行政・制度印刷2022年度診療報酬改定の概要が明らかになりました。医療・介護の経営情報誌「日経ヘルスケア」では、日経メディカル Onlineの「シリーズ◎ウオッチ診療報酬改定」で、2月9日に答申が行われた2022年度改定の速報をお届けしています。 今回の改定は事前の予想以上の「厳しく、細かい」内容といえそうです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を進める一方で、将来に向けた医療提供体制改革の手綱は緩めなかった形で、きめ細かな見直しが随所に施されています。
2022年度診療報酬改定の速報記事一覧
■全体速報【速報】2022年度診療報酬改定の詳細が決定■個別改定項目【急性期入院】一般看護必要度、A項目「心電図モニター」削除で基準値は緩和【高度急性期入院】ECMO 3万150点で新設等、重症患者対応や早期回復の取り組みを手厚く評価【軽症急性期・急性期後入院】地ケア病棟の要件・基準は厳格化が“目白押し”【感染症】感染症対策の中核担う感染対策向上加算1は710点に大幅引き上げ【回復期入院】重症患者割合の基準値が厳格化【慢性期入院】療養の経過措置病棟は2年延長も減算幅は25%に【外来】機能強化加算に在宅・看取りの要件追加【在宅】後方病床機能を強化し在宅医療の裾野広げる【精神医療】急性期救急入院料の評価体系が再編【働き方改革】地域医療体制確保加算を620点へ引き上げ【オンライン診療】初診料は251点、医学管理料も多くを引き上げ【訪問看護】専門性の高い看護師の訪問を複数項目で評価【加算関連】救急体制や多職種による早期回復の取り組みに手厚い点数■診療側・支払い側の見解【診療側】「将来像描かれず『誘導型診療報酬』となった」【支払い側】「心電図モニター」削除で患者状態評価が適切に
制度が目指す方向を見極める
ただし、改定内容を丹念に読み解くと、その意図と対処法が見えてくるはずです。例えば、急性期入院においては、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)において、A項目の「心電図モニター管理」を削除する等の見直しが実施されます。 急性期一般入院料1の該当患者割合基準は、看護必要度I(看護師が各項目を評価する方法)で「31%以上」に据え置かれ、同II(診療実績データを用いた評価方法)では29%から28%に緩和されます。許可病床200床未満の医療機関に関しては、両方とも引き下げられます。IとIIでは一定の差が設けられており、看護必要度IIへの移行促進を図りたい姿勢が鮮明にうかがえます。このように制度が目指している方向を推測しながら、まだ看護必要度IIに移行していない場合は導入すべきかなどを検討しつつ、2022年度改定に対応していくことが求められます。 3月10日に発行予定の日経ヘルスケア3月号では、参考資料を含めて30ページに上る特集「決定! 2022年度診療報酬改定」において、誌面でさらに2022年度改定の内容を分かりやすく解説します。読者であれば無料で「日経ヘルスケア 誌面ビューアー」を活用でき、お手元のスマートフォンやタブレットから閲覧することも可能です。改定内容を確認したいときなどに大変便利ですので、この機会にぜひご活用ください。
2022改定の柱でもある働き方改革を成功させるには?
2022年度改定では働き方改革もテーマの1つです。医療現場の働き方改革を推進し、2024年度から導入する医師の時間外労働規制に対応するため、タスクシフト・シェア等の医療現場の負担軽減に関する評価が見直されています。前回の2020年度改定で新設された地域医療体制確保加算は現行の520点から620点へ引き上げ。事務作業補助者による医師の負担軽減を評価する医師事務作業補助体制加算では、加算1、2ともに15対1~100対1補助体制加算までの全ての点数を引き上げます。 これに関連して日経ヘルスケア2月号では、特集「進め! 医療・介護タスクシフト・シェア」を掲載しました。2024年度には医師の時間外労働規制が始まる予定で、業務のタスクシフト・シェアが重要な課題になっています。2021年10月の「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(医療法等改正)の施行により、医療関係職種の業務範囲も拡大されました(図1)。医師から他職種への業務移管を促す狙いが含まれています。
図1 医療法等改正に伴って拡大された医療関係職種の業務範囲※クリックで拡大します。
タスクシフト・シェアでは「不安」「負担」「不満」の3つの「ふ」を解消
ただ、タスクシフト・シェアは一朝一夕では実現できません。業務を移管される側のモチベーションの醸成や技術移転に要する手間、人材採用等の費用面の負担などを考慮しなければいけないからです。厚生労働省の「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」の構成員で、慶應義塾大学大学院特任教授、ハイズ(株)(東京都中央区)代表取締役社長の裴英洙氏は、タスクシフト・シェアを進める勘所として、患者のメリットを第一に考えると同時に、「不安」「負担」「不満」の3つの「ふ」の解消が大切になることを強調しています。 シフトされる側が「業務に慣れていない」と感じる「不安」、「今以上に忙しくなる」と思う「負担」、「何で私がやるの?」といった「不満」への対応です。そのためには、自院・自施設の既存職員の「意識」(モチベーションなど)、「技術」(知識、経験など)、「余力」(人員、残業時間、資金など)の現状をまず見極め、意識が低ければ啓発や意識付けを行い、技術不足であれば研修や他施設の見学などで向上させる一方、投資や業務委託などで余力を生み出す必要があります。 さらに、タスクシフト・シェアを進める際のポイントとして裴氏がアドバイスするのが、「QST」を意識すること。「Quick win」「Small win」「Triple win」、つまり「賛同する職員を巻き込みながら、小さくてよいのですぐ得られる成果をまず3回出し続ける」ことです。この継続により取り組みが定着し、最終的に大きな成果につながってきます。日経ヘルスケア2月号では、「有資格者」と「無資格者」に分けてタスクシフト・シェアに取り組む医療機関や介護施設の例を紹介しています。ぜひご覧ください。
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