『【推しの子】』タイトルに付けられた【】の意味とは? 1巻は伏線だらけ!!【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 - TSUTAYA/ツタヤ
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社
現在週刊ヤングジャンプにて連載中の『【推しの子】』。『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ、『クズの本懐』の横槍メンゴがタッグを組んで描く本作はミステリー要素と業界ものの魅力の詰まったストーリーと多くの読者を魅了しオーラすら感じさせる画力の合わさった異色の作品です。今回はそんな『【推しの子】』について今までより一歩深いところまで踏み込んで赤坂アカ先生、横槍メンゴ先生に色々聞いて行きます。
目次
1.タイトルに秘められた思い、隠された謎2.漫画の中であえて、”フィクション”であることを明示する意図3.先生たちの新たなチャレンジ。それが舞台編4.神様のように嘘を真にするような存在、星野ルビー5.赤坂アカ先生作品のど真ん中の女性、有馬かな6.横槍メンゴ先生っぽい?!ヒロイン、黒川あかね7.【推しの子】に寄せられるネット上の数多くの考察8.赤坂アカ先生・横槍メンゴ先生から読者のみなさまへ
1.タイトルに秘められた思い、隠された謎
栗俣(インタビュアー):まずは本作のタイトルを“推しの子”とした理由について教えていただけますか?
赤坂アカ先生(以降赤坂先生):メンゴ先生と編集の方とやりとりするSNSのグループ名を僕が「推しの子(仮)」と名付けてやりとりしていて、それがそのまま本作のタイトルになっています。
横槍メンゴ先生(以降横槍先生):そうだったね。これ、どうやって思いついたの?
赤坂先生:1巻を読めばわかるんだけど“推しの子”には2つの意味があって、1つ目が「好きなアイドルを推す」という意味で、2つ目が「推しているアイドルの子ども」という意味。もともとアイドルをテーマにした作品を描きたかったから、このグループ名にしたんだよね。
横槍先生:それは自然と降りてきた感じなの?
赤坂先生:実は“推しの子”はあくまで企画タイトルだったんだよね。実際に漫画のタイトルは変更するつもりで“(仮)”もつけていたし。むしろ、メンゴ先生のネーミングセンスが爆発して、『クズの本懐』みたいなタイトルになるだろうなと思っていた。
横槍先生:だけど、想像以上に“推しの子”がハマったんだよね。実際に単行本の表紙を見たときにもバランスがバチっと決まっていて一目でわかる。こうした“神”タイトルって、練り上げるよりも直感でいいなってなるものだからね。
赤坂先生:うんうん、確かに。
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栗俣:ありがとうございます! またタイトルには『【推しの子】』と【】がついています。そしてこれが実は二重になっていますが、ここにはどんな意味があるのでしょうか?
赤坂先生:意図的に二重にしていて、作中の演出で使用するプランはあります。……くらいの回答でお願いします!
栗俣:ちなみにこれまでに【】がついているところがありましたが、重要なポイントなのでしょうか?
赤坂先生:一度やっていますよね、「【役者】」と表現しているところ。ただ、これ以上詳細をお話しすると勘のいい読者の方にネタバレしてしまう恐れがあるので、ここまででお願いします(笑)。
横槍先生:うんうん。
2.漫画の中であえて、“フィクション”であることを明示する意図
栗俣:本作は「この物語はフィクションである」という一言からはじまります。ここにはどのような思いが込められているのでしょうか?
赤坂先生:これは僕が大好きな島本和彦先生の『燃えよペン』だと思っていただくとわかりやすいと思います。フィクションでありながらも、漫画家の実情を描く。実際、『【推しの子】』を描くにあたって、かなり取材をしましたからね。
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横槍先生:それに「フィクションだ」と明言しておくことで、あらゆる場面であら探しに近いような作品と関係のないところで論争を避けることができます。
赤坂先生:うんうん。ただ、僕は妊娠を隠しながら活動するアイドルは実在するだろうと思っていて、みんなが想像する「実はあるかもね?」というようなテーマを扱うよというメッセージでもあるんだよね。
横槍先生:なるほどね。確かに、ショービジネスと言われる芸能界なんて存在そのものがフィクションの世界だもんね。
赤坂先生:うん。そして、本作でも重要なテーマの一つ“嘘”を引き立てる言葉にもなるのではじめに読者のみなさんに提示しています。
3.先生たちの新たなチャレンジ。それが舞台編
栗俣:いよいよこの記事が配信される11月19日、第6巻が発売されます! 舞台編も最高潮の盛り上がりを見せる一冊となりますが、舞台編の制作の裏側について教えてください。
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赤坂先生:舞台編、正直言って大変だったよね、メンゴ先生(笑)。
横槍先生:作画はめちゃくちゃ大変(笑)。バトル漫画のキャラクターの動きや表情の描写ってこれまで描いてこなかったから。
赤坂先生:僕もバトル漫画って描いたことなかったからまったく違う脳みそを使っている感覚。
横槍先生:そうだよね、だけど挑戦したい。そんな思いで、必死に舞台編は描いていますね!!
栗俣:ファンとしては先生たちの新しい一面を体験できて嬉しいです!舞台編まだまだ続きそうですよね!
横槍先生:長いシリーズになりました(笑)。
赤坂先生:バトル漫画ってそうだよね、大体1回戦闘に入ると長いから。今回は役者VS役者の構図が3組あるから長いというのもあるよね。
横槍先生:今回バトルしている6人のキャラクターがこの先の展開でも関連づいてくるので、長くはなったけど全部必要な対立・バトルだったと思う。
赤坂先生:そうだよね。そしてこの舞台編が終われば、またサスペンスパートに移っていきます。
4.神様のように嘘を真にするような存在、星野ルビー
栗俣:『【推しの子】』には星野ルビー、有馬かな、黒川あかねというファンの多い魅力的なヒロインが3人いますよね。
赤坂先生:メンゴ先生のおかげで魅力的なキャラクターになりました(笑)。
横槍先生:いやいや、アカ先生のおかげです(笑)。
栗俣:取材していて、本当にお二人の仲の良さが伝わってきます!! さて、そんなヒロイン一人ひとりについて詳しく伺っていきたいです。まずは星野ルビー。1巻のはじめから登場するキャラクターであり、1話目で生まれ変わる前の想いが叶いそこから物語が動き出している、まるで彼女から【推しの子】という物語が始まっているようなイメージを持つほど重要なキャラクターですよね?
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赤坂先生:そうですね、ルビーは物語の中で「光」として描いています。強い動機を持って生きているキャラクター。
横槍先生:そうなんです。彼女は物語の中で、言ってしまえば「神様」のような存在なので、彼女が動けば物語がどうしても前へ前へと進行してしまいます。
赤坂先生:そうそう。だから今ルビーはぐっと力を溜める温存タイム(笑)。
栗俣:アイの「嘘はとびきりの愛」という想いに対比するかのようにルビーには「嘘はいやだ」とはっきりと発言するシーンがあります。ここ、とても印象的ですよね。
赤坂先生:確かに対比構造は多いかもしれませんね。そう考えると、ルビーはアイのことを本当の意味で理解しているとは言えないのかもしれません。
横槍先生:アイの言動をストレートに受け止めていたんだよね、きっと。
赤坂先生:うん。だから、アイが吐いた嘘を実現していく存在なのかもしれない。
横槍先生:うんうん。
5. 赤坂アカ先生のど真ん中の女性、有馬かな
栗俣:続いては「有馬かな」。4巻で【推しの子】のタイトル回収と取れるあの発言などメインヒロイン感が凄いですよね。がありますが、意識して書かれているのでしょうか?
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横槍先生:『【推しの子】』の3人のヒロイン、「星野ルビー」「有馬かな」「黒川あかね」の3人の中でも一番アカ先生の“真ん中に存在する女性”が有馬かなちゃんですね(笑)。
赤坂先生:(笑)。決して贔屓しているとかではなく、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』で培ったすべてを生かすことができる“表現しやすい”キャラクターなんですよね。有馬かなは全力で外さないキャラクターにしたかったし、物語的にも暗い雰囲気を明るくすることができる人物も必要だった。だから「そうだ! かぐやキャラを呼んでくるか!」って。
栗俣:なるほど。確かにアクアが昔のアクアに戻れる相手としての描写などまさに「光」としての一面ですよね。
6.メンゴ先生っぽい!? ヒロイン、黒川あかね
栗俣:そして最新刊の6巻で最重要キャラクターとして描かれる「黒川あかね」について教えてください。彼女はコアなファンが多いキャラクターですよね。
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赤坂先生:今後も長く活躍するキャラクターですね。有馬かなと同じくらい人気が出て欲しいな思いながら、育てているキャラクターでもあります。
横槍先生:ファンのみんなに「どっち派ですか?」ってよく聞かれるんだけど、どっち派とかなくて、本当に二人とも可愛くて大好き。
赤坂先生:僕もどっちも好きになってきた。
横槍先生:ただ、仮にアカ先生が描けなくなったとしても私が描き続けられるのは「黒川あかね」の方だなと思う。メンゴっぽさがある。
赤坂先生:そうだね、最近ダークな雰囲気に寄せてきたから。
横槍先生:重曹ちゃん(=有馬かな)の方は、コミカルな要素が多いから私が一から動かすのは難しそう。アカ先生にしか動かせないよね。
栗俣:私も同じように感じています!「有馬かなはアカ先生っぽい」「黒川あかねはメンゴ先生っぽい」と。
赤坂先生:どっちも僕が考えたキャラクターなんですけどね(笑)。
7.【推しの子】に寄せられるネット上の数多くの考察。先生たちはどう見ているの?
栗俣:続いて、ファンの中でも加熱している「考察」をテーマにお話を伺えればと思います。まずは、物語の中でも黒川あかねが相手を考察するシーンがありますが、あれはミステリファンにとってたまらないんですよね。
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赤坂先生:ありがとうございます。ミステリファンにはウケがいい部分ですよね。
栗俣:まずはやはり1巻のインタビューシーンについて色々聞かせて下さい。4話冒頭のインタビューシーン。なぜこのメンツの中になぜあえて一般人であるアイの古参ファンがインタビューされているのか? というところをお聞かせいただけますか?
赤坂先生:あそこは読者に対して「構造」を伝えるためのもの。アイドルをテーマに据えているので「観客」との関係性を扱う必要がり、そのためにはファン目線が絶対に必要なんですよね。そこで登場させたのが古参ファン。今頑張っているキャラクターたちはまだ売れる前だからファン目線の要素は少なめですが、今後この要素は入れていきたいと思っています。
横槍先生:確かこのインタビューは単行本でまるっと差し替えたよね? アイの古参ファンにしては若すぎるって。オタク感は出したんだけど。
赤坂先生:そうそう。
栗俣:その他にも、五反田監督の映画タイトル「15年の嘘」や苺プロの元社長のインタビューやアイのビデオメッセージがなぜこのインタビューに含まれているかなどこの1巻のインタビューには気になるポイントが沢山ありますね!
赤坂先生:そうですね。この辺りは今後の展開ですべて触れる予定です。
栗俣:そして有馬かなのシーン。「天才だってナイフで刺されればお陀仏」というセリフ。どこまで理解した上での発言なのかで意味が大きく変わりますし、セリフの横に書かれている「あーくん」という表現もアクアではない可能性などミスリードを誘っていそうだし、考え出すと色々考察が止まらなくなります(笑)。
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赤坂先生:そうですね、ここはかなり情報量が多いですからね(笑)。僕は、そこについては某長寿名探偵漫画の作者のようにノーコメントを貫きます。一つだけ、サービスでお答えすると「あーくんはアクアのこと」です。以上!! これ以上は勘弁してください(笑)。
栗俣:そうなんですか!? これは大きな情報です! ありがとうございます! 続いては物語の中で出てくる「今日は甘口で」という少女漫画。これは『かぐや様は告らせたい』の中で出てくる作品と同じですか?
赤坂先生:はい、同じです。
栗俣:ということは、両作品は時間軸が一緒なのでしょうか?
赤坂先生:そうですね、詳細な設定はしていませんが。例えば他にも『【推しの子】』で登場する不知火フリルは、『かぐや様は告らせたい』で登場した不知火ころもの妹だったりします。
横槍先生:作品同士の関係性があるよね。マーベル・ユニバースみたいな。
赤坂先生:そのうちメンゴ・ユニバースが出てくるかもね(笑)。
横槍先生:(笑)。アカ先生の『インスタントバレット』も関係していたりするの?
赤坂先生:『かぐや様は告らせたい』とは少し。
横槍先生・栗俣:へぇー!!
赤坂先生:今後も『【推しの子】』でタイミングを見計らいながらこういうことができたらとは思っています。
8.赤坂アカ先生・横槍メンゴ先生から読者のみなさまへ
栗俣:ではインタビューの最後に、お二人から読者へメッセージをいただけますでしょうか。まずはアカ先生からお願いします。
赤坂先生:舞台編はもう少し続きますが、その後は初期の雰囲気を纏ったサスペンスパートが展開されます。僕が面白いと思うものを書くことはもちろん、ファンのみなさんの好きをしっかりと意識して描いていきます。ようやくお待ちかねのルビーの活躍も用意していますので、物語も前へと進んでいきます。乞うご期待ください!
栗俣:ありがとうございます! ではメンゴ先生、お願いします。
横槍先生:とにかく2.5次元の舞台編は作画を頑張っています。ファンの方から「メンゴがんばったじゃん」というコメントをもらい、とても嬉しかったです。アカ先生も初めてのチャレンジをしているので、ぜひ注目してみていただければと思います。そしてその先は一段階パワーアップしたサスペンスでお楽しみください!
栗俣:ありがとうございます! 本日はタイトルの秘密から考察への回答までいただき、大変充実したインタビューでした!また、よろしくお願いします。
赤坂アカ先生・横槍メンゴ先生:こちらこそ、ありがとうございました!!
仕掛け番長のおすすめ本
【推しの子】 最新刊6巻発売中!!
出版年月:2021年11月著者:赤坂アカ、横槍メンゴ出版:集英社
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【コンシェルジュ】仕掛け番長
栗俣力也(くりまた・りきや)。絶版書の復刊プロデュースを数多く仕掛け、ヒット本を発掘することで知られ、読者や出版業界関係者に「仕掛け番長」の愛称で呼ばれる本が大好きな日本男児。
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