「GPD WIN Max」にGeForce GTX 1080をつなげてみた
GPDの8型ゲーミングPC「WIN Max」が無事クラウドファンディングの目標を達成し、7月中にもIndiegogoの出資者向けに出荷される見込みだ。また、日本国内の正規代理店である天空からも、8月下旬から9月中旬に出荷される。
今回、天空からお借りした最終リテール版相当のサンプルを、AKiTiO製のThunderbolt 3接続外付けGPUボックス「Node Titan」につなげ、そのNode Titanに手持ちのGeForce GTX 1080を搭載。使い勝手を検証するとともに、各種3Dベンチマークを実施してみた。
WIN MaxのCPUには、Ice Lake世代のCore i5-1035G7が搭載されている。Ice Lake世代では大幅に向上したGPU性能に目が行きがちなのだが、CPUコアは新世代のSunny Coveマイクロアーキテクチャとなっており、クロックあたりの命令実行数(IPC)が向上しているのもトピックだ。
Intelの現状の10nmプロセスでは、残念ながら4GHz超えのクロックを達成できていないが、GPDによればそれでもCore i5-1035G7は、かつてメインストリームデスクトップ向け最上位であったCore i7-4790Kに匹敵する性能を実現しているという。
加えて、GPD WIN MaxではThunderbolt 3ポートを搭載しており、外部GPUが接続可能となっている。この高い性能のCPUと相まって、外付けのデスクトップ向けGPUの性能を引き出せる、と謳っているわけだ。
GPDが公開しているCPU-Zによるベンチマーク結果。Core i7-4790K相当の性能だと謳っている今回組み合わせて使用するNode Titanは、すでにレビューでお伝えしたとおり、本体上部にハンドルを備えたThunderbolt 3のGPUボックスだ。650Wの電源を内蔵しており、ハイエンドGPUをサポートできるほか、PC本体に対し85Wの給電が可能となっている。85Wという容量は、Razer Blade Stealthのような100Wを必要とするシステムでは不足気味なのだが、WIN Maxでは問題なく利用できる。
Thunderbolt 3で外付けGPUを接続する場合、PCI Expressの限られた帯域を使って映像をWIN Maxに戻すのではなく、外付けGPU側のディスプレイ出力にディスプレイを接続し出力したほうが良い性能が出る。しかしこの構成でWIN Max内蔵コントローラを使ってゲームプレイした場合、WIN Maxは単なる重いコントローラとなってしまうので、WIN Maxの“旨味”が半減する。
このため、今回はあえてWIN Max内蔵のディスプレイでテストした。Node Titanのレビューでは、外部ディスプレイでテストしたため、そちらの数値もあわせて掲載するので参考にされたいが、外部ディスプレイ接続時はもう少し性能向上が見込めると考えていいだろう。
GeForce GTX 1080をつなげたところ結果から言えば、WIN MaxとGeForce GTX 1080の組み合わせはおおむね期待どおりといったところ。WIN Maxの液晶は1,280×800ドットなので、外部GPUでレンダリングされた画像を内蔵GPUに転送する帯域は少なくて済み、フルHDのシステムと比べるとボトルネックは少ない。そういった点でもあえてこのディスプレイでプレイするのはアリだ。
ただ、GeForce GTX 1080をフルに引き出せるCore i7-6700Kのシステムと比べると、性能は約75%程度に留まっており、Thunderbolt 3の限界も少なからず見えている。よって、WIN MaxのためにこれからGPUを買うなら、GeForce GTX 1660 Tiか、GeForce RTX 2060あたりに留めておいたほうが無難だろう。
【グラフ1】3DMark Time Spy。このベンチは重い部類だが、内蔵GPUとは一線を画す性能となる【グラフ2】3DMark Fire Strikeの結果。内蔵GPUのじつに5倍のスコアを記録した【グラフ3】比較的軽量な3DMark Night Raidでは差がそこまで開かない。軽量な3Dゲームなら内蔵GPUでも十分にプレイ可能、ということだ【グラフ4】3DMark Sky Diverの結果。こちらもNight Raidと同じ傾向である実際に外付けGPUを接続した状態で、「グランド・セフト・オートV」、「黒い砂漠」、「Witcher 3: Wild Hunt」といった大型タイトルをインストールしてプレイしてみたが、グラフィックス設定が最高の状態でもスムーズにプレイできることが確認できた。
問題は、そもそもWIN Maxの液晶が1,280×800ドットしかないうえに、8型というサイズもあって、表現力がかなり限られていることだ。たとえばコンクリートや地面のテクスチャの凹凸や草木など、情報量に富んだ美麗グラフィックスでも、WIN Maxの液晶だとかなりスポイルされてしまうことだ。
そのため、グラフィックスが「低」の状態と「高」の状態で比べると、影のエッジが細かくなったり、光の表現がソフトになったり、被写界深度表現がよく使われるようになったり……といった違いはわかるものの、劇的に画質の違いがわかるか? と言われたら“否”である。スマートフォンのゲームを27型の画面で拡大表示すると貧弱だが、スマートフォン自身で楽しむ分にはそれなりキレイに見えるのと同じ原理だ。
Witcher 3: Wild Hunt。グラフィックス設定を最高にするとGTX 1080でも60fpsに届かず重い。しかし十分にプレイアブルだ。とはいえ、この解像度とサイズの液晶では、高と低の設定の違いはあまりわからないグランド・セフト・オートVではすべて高に設定しても60fps以上で動作可能。光の表現が若干柔らかくなり、車体への映り込みが目立つようになるので、ほかのタイトルに比べれば画質設定の違いがわかりやすい方だMMORPGの「黒い砂漠」は“リマスター”設定でもほぼ60fps。一時的に重いシーンで50fps前半となるが、プレイに支障はない。ただ、1,280×800ドットの8型では、プレイヤーを拡大表示しないかぎり、リマスターと従来の違いはわかりにくいしかもThunderbolt 3でゲームをプレイしている最中は、とっさにケーブルを抜いて移動することもできないので、どこでも好きな姿勢でPCゲームが楽しめるWIN Maxの旨味もなくなってしまう。よって、WIN Maxのポータビリティを活かしたゲームの楽しみ方を期待するユーザーが、4万円前後のThunderbolt 3 GPUボックスと3~4万円のGPUをさらに追加投資すべきか? と言われたらノーと言わざるを得ない。
Thunderbolt 3のGPUボックスを接続すると、WIN Maxの最大のメリットである可搬性に制限が生じる。手に持ってプレイしたい場合は、2m前後のアクティブタイプのThunderbolt 3ケーブルを用意したほうが得策だろうただ、すでに余っている旧世代のGPUをWIN Maxで再活用したい、もしくはあえてWIN Maxに別途キーボードやマウスをつなげて、じっくり椅子に腰を据えて大画面でPCゲームを楽しみたいといったユーザーなら、Thunderbolt 3 GPUボックスの検討の余地は十分にある。少なくとも現時点では、Thunderbolt 3のGPUボックスはすぐに淘汰されてしまうような製品ではないからだ。
ノートPCのThunderbolt 3による外付けGPUは、いわばロマンの域なのだが、8型のWIN Maxとの組み合わせは、まさにロマンを極めたものだと言っていいだろう。