「DaVinci Resolve Monthly SAMPLER Vol.16」レポート。Huluの4K HDRワークフローを解説
手作業で別録り音声と映像を同期
「THE LIMIT」は「制限をかける」をコンセプトとしているが、現場スタッフにも相当な制約があったという。バスやタクシーなどの現場は狭く、撮影は困難を極めたと振り返った。
例えば、小型で自由度の高さからα7S IIIをメインカメラに使用。そこで山本氏はHDRのグレーディングを想定して外部レコーダーの10bit収録を提案したが、カメラマンは狭い現場を考慮して最小構成を希望。最終的には、H.265形式のS-Logによる内部記録を選択したという。
次に、アプリケーションや映像と音声の同期を紹介。アプリケーションはDaVinci Resolveのバージョン16を使用。しかし当時は少し微妙な時期で、DaVinci Resolve 17のベータ3かベータ4を公開。DaVinci Resolve 17には「HDRパレット」と呼ばれるHDRのグレーディングの機能が搭載され、浦田氏もDaVinci Resolve 17に興味があったという。
山本氏はベータ版でも安定しているものの、万が一逆戻りの時間を考慮して17は見送り。最終的には、安定バージョンのDaVinci Resolve 16.2.8を選択したと続けた。
本番用の音声は、α7S IIIのカメラ収録のほかに、メインとして音声スタッフがレコーダーで収録。カチンコとスクリプターが現場で「テイク、カット、ファイル名はこれ」と指示をして、それを頼りに手動で画と音を同期する方法で行った。
しかし、その後の画と音の同期はタフな作業の連続だったと振りかえった。オフラインエディターに渡す素材は、1話につき100カットから200カットの膨大な量があり、さらにそれぞれに役者のピンマイクやガンマイクで状況を収録した4チャンネルから5チャンネルの音声ファイルで溢れかえったという。
浦田氏によると、DaVinci Resolveには別録りしたオーディオを自動同期するオーディオシンク機能があるが、音声レベルが小さすぎると自動で見つけられないうえに、違うものが当たってしまう。結局、最初から最後までチェックする必要があったという。
さらに、カチンコをピントがくる位置に置くことができないのが原因による不明ファイルが多かったり、役者のピンマイクやガンマイクのレベルが違う、チャンネルのレイアウトが違うなどの問題に悩まされたという。例えばオーディオトラックのチャンネル1は役者Aだが、次のカットに行くと役者Bになるなど、チャンネルレイアウトを変えなければいけないこともあったと語った。
最終的には若手スタッフの力を借りて、浦田氏のアシスタントがすべてマニュアルで同期作業を担当。山本氏は「ちょっと酷なことをやらせてると思いました」と振り返った。