HDR10や14bit LUT搭載のハイアマ向け27型WQHD液晶、ASUS ProArt PA27AC
Thunderbolt 3、DisplayPort 1.2、HDMI 2.0aに対応した27型WQHD液晶ディスプレイ
今回ご紹介する「ProArt PA27AC」は、昨年(2017年)のCOMPUTEX TAIPEIで、ポータブル液晶ディスプレイ「ZenScreen MB16AC」、32型4K対応の「ProArt PA32UC」、マルチメディア用途向27型WQHD「Designo MZ27AQ」などと一緒に新モデルとして展示されていたものだ(関連記事:ASUS、USB Type-C対応モバイル液晶やHDR10対応液晶などを展示)。
それからちょうど1年経って、ようやく国内投入されたことになる。型番からもわかるようにパネルサイズは27型だ(ちなみに国内では、ZenScreen MB16ACは2017年7月、ProArt PA32UCは2018年3月、Designo MZ27AQは未発売)。
販売価格は価格.com調べで10万円超えと、ランク的には高級ディスプレイとなる。27型ディスプレイに10万円以上かけられる層は多くないと思われ、残念ながらこの段階でパスするユーザーも少なからずいらっしゃるだろう。
おもな仕様は以下のとおり。
【表】ASUS「ProArt PA27AC」の仕様 | |
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液晶サイズ | 27型 |
色域 | sRGB:100% |
パネル方式 | IPS |
表示解像度 | 2,560×1,440ドット(WQHD) |
アスペクト比 | 16:9 |
画素ピッチ | 0.233mm |
表面処理 | 非光沢 |
タッチパネル | なし |
応答速度 | 5ms(中間色) |
コントラスト比 | 1,000:1(ASCR有効時1億:1) |
視野角 | 水平178度/垂直178度 |
輝度 | 400cd/平方m |
表示色 | 約1,677万色 |
チルト角度 | 下5~上23度 |
高さ調節 | 0~120mm |
スイベル | 左60~右60度 |
ピボット機能 | 左90~右90度 |
映像入力 | Thunderbolt 3、DisplayPort 1.2、HDMI 2.0a、HDMI 1.4×2 |
PC用USB | USB 3.0 Type-B×1、USB 3.0 Type-A×2、 USB 3.0 Type-C×1 |
オーディオ出力 | スピーカー2W+2W、3.5mmステレオミニジャック |
VESAマウント | 対応(100×100mm) |
電源 | 内蔵 |
消費電力 | 使用時:25W以下、スタンバイ時:0.5W以下 |
付属品 | DisplayPortケーブル、Thunderbolt 3 Cable(20Gbps)、HDMIケーブル、電源ケーブル、サポートCD-ROM、USB 3.0ケーブル、クイックスタートガイド、保証書 |
サイズ/重量 | 614×221×386~506mm(幅×奥行き×高さ)/約8.5kg |
価格 | オープンプライス(117,504円/価格.com調べ) |
パネルサイズはIPS式非光沢の27型、表示解像度は2,560×1,440ドット(WQHD)。タッチには非対応だ。そのほかの仕様は、応答速度は中間色で5ms、コントラスト比は標準1,000:1(最大1億:1)、視野角は水平/垂直ともに178度、輝度400cd/平方m、表示色は約1,677万色、色域はsRGB 100%、色差ΔE<2などとなっている。
映像入力は、Thunderbolt 3×2(入力/出力)、 DisplayPort 1.2、HDMI 2.0a、HDMI 1.4×2。Thunderbolt 3は入力と出力があるので、複数台でデイジーチェーンが可能だ。
PC用USBポートは、USB 3.0 Type-B×1(入力)、USB 3.0 Type-A×2(出力)、 USB 3.0 Type-C×1(出力)。
オーディオ出力は2W+2Wのスピーカーと、3.5mmステレオミニジャック(同社サイトの仕様ではオーディオ入力:3.5mmステレオミニジャックとなっているが、これは間違いで、ヘッドフォン用の出力だ)。
パネル側は100×100mmのVESAマウント対応。スタンドは、高さ0mm~120mm、チルト下5~上23度、スイベル左60~右60度、ピボットにも対応する。
付属品は、電源ケーブル、サポートCD-ROMに加え、DisplayPortケーブル、Thunderbolt 3 ケーブル(20Gbps)、HDMIケーブル、USB 3.0ケーブルも同梱。一式そろっているため、設置直後にケーブルがないと別途あわてて購入したり、備品箱のなかを探し回る必要がないのは良い。
機能は、応答速度を高めるTrace Freeテクノロジー(いわゆるオーバードライブ)、Standardモード/sRGBモード/Sceneryモード/Readingモード/Darkroomモード/User Mode 1/User Mode 2と7モードのSplendid映像設定、色温度4モード(9300K/6500K/5500K/5000K)、1.8/2.0/2.2/2.4/2.6のガンマ、6色調整(R,G,B,C,M,Y)、(PIP)ピクチャー・イン・ピクチャー/(PBP)ピクチャー・バイ・ピクチャーなどを搭載。
また、A4用紙など任意のサイズに合わす「Quick Fit」、ブルーライト軽減、Adaptive-Sync(DisplayPort/Thunderbolt 3)、HDR10、「I1DisplayPro」や「Spyder5」などを使ったハードウェアキャリブレーション、14bit LUT対応など、非常に豊富だ。
本体サイズは614×221×386~506mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約8.5kg。消費電力はスタンバイ時0.5W以下、使用時25W以下。価格はオープンプライスだが、価格.comで調べたところ117,504円/税込だった。WQHD、sRGB 100%、ハードウェアキャリブレーション対応であれば妥当なところだろうか。
前面右下に電源LED。狭額縁なのがわかるコネクタ周辺。左からロックポート、電源スイッチ、AC入力、HDMI1/2/3(2.0a)、DisplayPort、USB 2.0 Type A(保守専用)、Thunderbolt×2、USB 3.0 Type-C、USB 3.0 Type-A×2、USB 3.0 Type-B(アップストリーム)、3.5mmステレオミニジャック背面左側に操作用ボタンを配置ボタン系中心。上から順に、メニュー(5方向)、閉じる、入力選択、QuickFit、ショートカット1(明るさ)、ショートカット2(ブルーライト低減)、電源右サイド。高さ最小、傾き最大。左右の側面にはなにもないOSDその1。Splendidで5つのモード(標準/sRGB/シーン/読み取り/暗室)と、2つのプリセットOSDその2。色。明るさ、コントラスト、ガンマ(1.8/2.0/2.2/2.4/2.6)など、一般的な調整ができるQuick FitでA4縦を表示。枠はメニューボタンで移動させることができるピクチャー・イン・ピクチャー表示。DisplayPortにHDMI1を小窓表示ピクチャー・バイ・ピクチャー表示。DisplayPortとHDMI1を分割表示筐体はスタンド側がシルバー、パネル側はブラック。写真からもわかるように狭額縁ではあるものの、側面は薄型というほどでもない。スタンドの足の部分が少し広めで、全体的にもガッチリしている。その分、パネルはふらつかず安定する。
高さは最大+12cm、チルトは下5~上23度、スイベルは左右60度ずつ、またピボットにも対応。好みの位置に調節できる。
前面は右下に電源LED。背面は左側に操作系を集中。上から順に、メニュー(5方向)、閉じる、入力選択、QuickFit、ショートカット1(明るさ)、ショートカット2(ブルーライト低減)、電源。メニューの5方向はジョイスティックのように上下左右、そして中央と操作できる。ショートカット1と2は標準で“明るさ”と“ブルーライト低減”になっているが、設定で変更可能だ。
OSDは、Splendid、ブルーライト低減、色、画像、サウンド、PIP/PBP設定、入力選択、システム、ショートカットの設定が行なえる。なおPIPの小窓は、左右の上端/下端に表示できる。
狭額縁の液晶はフチにボタンが入らず、本機のように背面へボタンを配置するタイプが、他社も含め増えているものの、筆者としては正直使いにくい。なにかアイディアがほしいところだ。
コネクタ周辺は、ロックポート、電源スイッチ、AC入力、HDMI1/2/3(2.0a)、DisplayPort、USB 2.0 Type A(保守専用)、Thunderbolt×2、USB 3.0 Type-C、USB 3.0 Type A×2、USB 3.0 Type B(アップストリーム)、3.5mmステレオミニジャックを配置。非常に豊富だが、ケーブルマネジメントの機構がないので、(レアケースだろうが)全部入れると結構ゴチャゴチャしそうな感じだ。この部分を覆う長細いパネルも付属する。
ディスプレイは、もちろんすべてにおいて良好。非光沢なので映り込みも少なく非常に見やすい。またサイズ的にも27型2,560×1,440ドット(WQHD)だと、フルHDや1,920×1,200ドットよりいろいろな意味でちょうど良く、アプリケーションが使いやすい。これまであまりWQHDには興味がなかったが、ちょっとほしくなってしまった。
内蔵している2W+2Wのスピーカーサウンドは、HDMI経由の映像で視聴したが、とりあえず鳴る的な感じで、パワーもレンジも不足。音楽を聴いたり映画を観るには不向きだ。3.5mmステレオミニジャックへイヤフォンを接続して聴いても同じ傾向で、さらにいびつっぽい。オマケ程度と考えるべきだろう。パネルが良いだけに残念な部分だ。
付属のTesting Report(1/2)付属のTesting Report(2/2)カラープロファイル(外側/グレイがPA27AC、内側/カラーがsRGB)工場出荷時にsRGBにキャリブレーションされ、パッケージには1台ずつ測定したTesting Reportが付属し安心感がある。付属のicmをmacOSのプロファイルでsRGBと重ねたところ、100%+αの色域があった。
テストは筆者のメインマシンに搭載しているビデオカード「MSI GeForce GT 1030」で行なった。GTXではなくGTでCUDAコア384、メモリはGDDR5/2GB。ゲーミング向け製品ほどのパワーはないものの、Pascalアーキテクチャで、DisplayPort 1.4とHDMI 2.0に対応するため、HDR10も確認できる。いろいろな意味でプロセッサ内蔵のiGPUよりはマシ……と言ったところか。実際Windowsの設定/ディスプレイでは、画面キャプチャからもわかるように、“HDRとWCG”の項目が表示された。
HDRの確認はYouTubeの「The HDR Channel」で行なった。設定/ディスプレイ/HDRとWCGの設定で、HDRとWCGをオンにしたりオフにしたり、SDRコンテンツの明るさを1~100までいろいろさわってみたが、もはや別の映像に見えるほどの違いがある。またHDRコンテンツを検出すると、ディスプレイ上に「HDR ON」の文字が表示され、すぐにわかるようになっているのは良い。
付属CD-ROMのマニュアル一覧付属CD-ROMのicmとキャリブレーションソフトウェア設定/ディスプレイ/2,560×1,440ドット、HDRとWCGオン設定/ディスプレイ/HDRとWCGの設定付属のCD-ROMに入っている「ASUS ProArt Calibration」は、ディスプレイのキャリブレーションをPCから行ない、色などを調整できるユーティリティだ。ただ調整に「I1DisplayPro」や「Spyder5」などが必要なため、今回は試していない。画面キャプチャで雰囲気だけ見てほしい。OSDの項目にはなかったsRGB以外、たとえばAdobe RGBなどにも設定可能だ。CD-ROMに入っているのはWindows版であるが、同社のサイトからmacOS版もダウンロードできる。
ASUS ProArt Calibration/Color Accuracy/StandardASUS ProArt Calibration/Color Accuracy/AdvancedASUS ProArt Calibration/UniformityASUS ProArt Calibration/Settings半日ほど使ってみたが、sRGB用ディスプレイとしては申し分のない性能だろう。デザインやWeb系の制作にもってこいだ。ただ写真観賞用としては、sRGB以上の色域がほしいところ(もちろん現状でも綺麗なのだが)赤、青や緑などの原色系がくすんでしまう。
少し残念なのは、ハードウェアキャリブレーションなど、これだけの機能を持っているにも関わらず、オプションで遮光フードが用意されてないことだろうか。ASUSにはこの点、ぜひとも検討していただきたい。
以上のようにASUS「ProArt PA27AC」は、IPS式非光沢の27型WQHDディスプレイだ。多彩な入力に、Type-Cを含めた豊富なUSB Hub機能、そしてHDR10や14bit LUT、ハードウェアキャリブレーションなどにも対応し、高性能を誇っている。
価格が10万超で、遮光フードがなしと気に部分はあるが、数万円の安価なディスプレイではなく、1ランク上のプロ/ハイアマ用ディスプレイ導入を考えているユーザーにとっては、申し分のない候補になりうる1台と言えよう。