施行目前「改正電子帳簿保存法」ってなに? 3つ+αのポイント
ポイント2:データの「真実性の確保」ができるようにする
「ポイント1」にある通り、以前より電子化しやすくなったとはいえ、ただただ無条件に「受け取ったファイルをそのまま保存しておけばいい」わけではない。元が電子にしろ紙にしろ、それらを電子データで保存する際には主に2つの要件が求められる。
その要件の1つは「真実性の確保」。
わかりにくいかもしれないので言い換えると、「そのファイルがいつ受け渡しされたものかがわかり、後で変更されたりしていない(変更してもそれがわかる)」こと、つまり「ユニーク性を担保できるようにせよ」ということだ。
ではその「真実性の確保」はどのようにすればいいのか。いくつか選択肢はあるが、1つ目の方法は「請求書を出す側がタイムスタンプを付与する」もしくは「請求書を受け取る側がタイムスタンプを付与する」こと。なのだけれど、これは大企業ならともかく、中小企業、フリーランスにとっては最初から選択肢として考えない方が良さそうだ。
請求書を送る側がタイムスタンプを付与するまたは請求書を受け取る側がタイムスタンプを付与するなぜならこの「タイムスタンプ」は、単にファイル日付のことを指しているのではなく、国税庁によって認められた第三者のタイムスタンプサービスを利用してファイルに証明書的に付与するものだからだ。
現在のところいくつかの企業がタイムスタンプサービスを提供しているが、その利用料金は1件あたり数万円~数十万円かかると見られ、多くの事業者にとって現実的ではない(自前でタイムスタンプを付与するシステムを開発する、ということも考えられるが、なおさら現実的ではないと思われる)。
取引先がそれらのタイムスタンプサービスを利用していて、その電子データを受け取る、ということであれば、その部分だけは要件を満たせることになる。が、そうではない他の取引先からの請求書には代わりに自分でタイムスタンプを付与しなければならないし、電子データを受け取ってから付与するまでの事務処理規程を整備する必要もある。手間とコストが増大することは避けられない。
なので、通常はそれ以外の手段をとることになる。
ということで2つ目の方法は「データの訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備する」というもの。請求書などをデータで受け取ったときに、それをどういう社内フローで回して、変更や削除を行なうときにはどういう手順で実行し、管理するのか。そうした一連の処理について社内規程として文書などできちんと整理しておく、ということだ。
国税庁では、この「事務処理規程」のひな形を用意しているが、特にこれといったフォーマットが定められているわけではない。自社にとって利用しやすい形式で作成し、現状の社内業務に照らし合わせながら、従業員らが間違いなく処理するための参考にできる資料にすればいいだろう。
社内の事務処理規程を整備し、それに沿って運用する。国税庁が公開しているサンプルをベースにしてもOK参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁
既存業務のあいまいさをなくして再整理するという意味でも、事務処理規程を作っておいて損はない。けれど、従業員が1~数名程度の小規模事業者やフリーランスの場合は、いちいち社内規程として整備することの合理性が感じられない、というのも確か。
そうした事業者は3つ目の方法として、「データの訂正削除を行なった場合にその記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用する」を選ぶことになるだろう。
改正電子帳簿保存法に対応するSansanの「Bill One」などを利用すれば手っ取り早いたとえば、請求書などのやりとりを独自または汎用のシステム上で行なって、データとしての「真実性の確保」を自動的に可能にする。こうすることで、利用するシステムによってはさらなるメリットがある。後述のもう1つの要件である「可視性の確保」も同時に満たせる場合もあるのだ。そうしたシステムの1つに、今回ご協力いただいたSansanの「Bill One」も含まれる。