ドコモ・インテルの連携協定にレノボが参加。3社で携帯通信機能搭載PCの普及を目指す - 3社合同記者説明会
NTTドコモとインテル、レノボの3社は、LTE・5Gを搭載したノートPC「Connected Modern PC(CMPC)」のビジネス利用を促進するために協業する。2021年4月にドコモとインテルが結んだ連携協定にレノボが参加する形となり、実際のPCメーカーが参画することで、より取り組みの強化を図る。まずはCMPC導入に向けたホワイトペーパーを発行するほか、普及拡大に向けた取り組みを加速させる。
ここ数年のコロナ禍において、企業のリモートワーク導入が進んでいる。ただ、大企業に比して中小企業の導入が進んでいない。東京商工会議所の調査では、当初は中小企業のリモートワーク導入率が6割を超えていたにもかかわらず、2021年9月には半数以下にまで落ち込んでいた。しかし、いったんテレワークを経験した従業員は、その8割が継続を希望している。時間をコントロールしやすいことから、特に子育て世代の従業員の希望が高かったという。
企業側に対するドコモの調査では、導入費用が高い、紙媒体の処理が必須で出社が必要、セキュリティ面が心配、従業員の自宅ネットワークの環境がまちまち……といった懸念があり、導入に後ろ向きになっているという現状が浮き彫りになっていた。
ドコモは「2012年から企業向けにSIM内蔵PCの普及活動をしてきた」(NTTドコモ法人ビジネス本部DXソリューション部長・町田直氏)ことから、様々なノウハウを蓄積してきた。特にセキュリティ面については、MDMの導入によるリモートワイプ、システム管理者によるリモートでのキッティングやメンテナンス、ドコモネットワークからAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureへの直接接続といったセキュリティを高めるサービスを提供してきた。
法人からのCMPCに対するニーズとして、町田氏は大企業、中堅企業、中小企業を想定した3つのパターンがあると指摘。大企業向けには上記のドコモネットワークを直結させる閉域接続やMDMなど多岐にわたるサービスをカスタマイズして提供。中堅規模の企業には、遠隔サポートやキッティングを始めとしたサービスをパッケージとして提供することを想定し、準備中だという。
中小やSMBなど、お任せで運用を最小限にしたいというニーズに対しては、使用後にPCを終了するとデータがクラウドにアップロードされて端末からは削除される「データレスPC」を提供することで、安全面を確保しつつ手軽に利用できる月額サービスを用意している。
「PCがあればどこでも仕事ができる――ということをいかに実現するかが、CMPCで重要な点」だとインテルの執行役員常務第2技術本部本部長の土岐英秋氏は話す。PCがデスクトップからノート型に移り変わり、有線LANが無線LANになり、携帯回線が普及するに従って、インテルでもモバイルプラットフォームの強化を進め、性能向上に努めてきた。
その結果、モバイルPCにおける携帯通信機能の搭載は、グローバルでも順調に拡大。特にエンタープライズとSMBの領域で大きく伸びている。ただ、その伸びは欧州・中東・アフリカというEMEA市場が過半を占め、日米中/APACの各地域ではまだそれほど伸びていないという。
インテルは、今回のドコモとの連携と同種の取り組みをグローバルで展開しているが、今後、シェアが低い各地域でも拡大が見込めるとして、CMPC拡大に向けた取り組みを重視していく考えだ。
インテル・ドコモの両社が進めてきた連携へ新たに参加したレノボは、もともと1992年に日本IBM(当時)の大和研究所が生み出した「ThinkPad」を継承している。「働き方改革はここから始まった」とレノボの執行役員副社長・安田稔氏はアピールするが、結果としてThinkPadは、法人向けのノートPCとして根強い人気を維持してきた。
2007年には国内で初めて3Gに対応したThinkPadを発売して以来、すでに21シリーズの携帯通信搭載PC(CMPC)を提供してノウハウを蓄積してきたレノボは、今回の取り組みに参画することで、CMPC導入における課題の解消に取り組む考えだ。
現状、テレワークのネットワーク手段としてCMPCを使っている例は11%程度にすぎないという。そもそもテレワークの実施率が2~3割程度の状況で、まだ小さな市場なのだ。
CMPCの導入にあたっての阻害要因はいくつかある。1つ目には、そもそもCMPCのような携帯通信内蔵PCの存在が知られていない点が挙げられ、ホワイトペーパーなどでこれを解消する考え。また2点目として、IT部門にとって未知の領域で負担が増えてしまう点があり、これはトラブルシューティングを提供するなどで負担軽減を図っていく。
3つ目として、CMPCでどれだけの通信が行われ、企業側の負担がどの程度になるかが分からないということもある。どの料金プランを選べばいいか分からないという声に対しては、フィールドテストで実測値を計測して、その情報を参考値として提供するという。
レノボによれば、5G対応ThinkPadをドコモの5Gに接続して、安定して下り80Mbps、上り10Mbps以上を確保した状態で計測したところ、720p解像度のオンライン会議(Microsoft Teamsを利用)では1分間で約50MBのトラフィックとなり、約1.8時間で5GB、約2.5時間で7GB、約7.2時間で20GBになった。
こうしたデータ消費は通信状況や画面共有を使うなどで変動するため「最大値に近い推測値」(安田氏)だが、公開されたホワイトペーパーにはユースケースごとの概算通信量の試算表も用意。ユーザー企業がコストを推測できるようにした。
ドコモの町田氏は、CADのような大容量のデータを使う場合は無制限がいいが、一般的なテレワークの環境では一人一人の差があっても数十人規模になればだいたい平均に収まると指摘。最初は無制限プランで平均値を計測して、最適なプランに変更する……という運用方法を提案する。
3社では今後、セミナーやイベントなどを開催してCMPCの訴求を図るほか、レノボ以外のPCメーカーなどの参画も促し、業界全体でCMPCの普及拡大を目指していく考えだ。