コナミのMSX向け教育シリーズ第1弾 『けっきょく南極大冒険』
ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
コナミお馴染みのオレンジパッケージに、カートリッジが入っています。マニュアルも同梱されているのかと思いきや、操作方法などはパッケージ裏に書かれていて、一緒に入っているのは南極に関する説明でした。当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、コナミが1983年にMSX向けに発売した“教育シリーズ”の1本目となった『I love 地理 けっきょく南極大冒険 ANTARCTIC ADVENTURE』を取り上げます。発売は1983年。
1980年代半ば、コナミと言えばアーケードゲームとMSXのソフトを数多くリリースしているソフトハウスの一つでした。そんなコナミが、“教育シリーズ”と銘打って発売したMSX用タイトルの第1弾となったのが、今回紹介する『I love 地理 けっきょく南極大冒険 ANTARCTIC ADVENTURE』です。ストーリーは特に設定されていなかったようで、パッケージでの紹介文は「ペンギン君、スケートをはいて南極大陸一周。アザラシをかわし魚をキャッチ!さあ、めざす基地は目前だ。」となっていました。その目的は、「ペンギン君のスケーティングやジャンプをうまく使って南極大陸での自然と戦いながら制限時間内に各国の観測基地を訪問していくゲームです。」と書かれています。
ゲーム名は『けっきょく南極大冒険』ですが、タイトル画面に表示されるのは、英訳の『Antarctic Adventure』となっています。ここで操作方法を、キーボードまたはジョイスティックから選択します。プレイヤーが操作するペンギン君は、カーソルキーの↑でスピードアップ、↓ではスピードダウン、←→で左右に移動ができるほか、スペースキーでジャンプもできます。ステージは画面奥から手前に向かってスクロールするので、道中に出現する氷穴やクレバスはジャンプで切り抜け、穴から出現するアザラシは左右へのスケーティングでかわし、先へと進みます。画面上には制限時間だけでなく基地までの距離も表示されているので、その情報も活用しながら先へと進みましょう。
ゲーム中のBGMは、Emile Waldteufel作曲の「スケーターズワルツ」をアレンジしたものとなっています。背景は、ステージによって昼だったり夕方だったりと変わります。ジャンプしている時の、手をばたつかせている仕草が可愛い!クレバスに落ちてしまった時は、スペースキーを押せばペンギン君が這い上がり、プレイ再開となります。しかし、氷穴に足を取られたり、アザラシにぶつかってしまうと“おっとっと”となり、約2秒間ほど操作不能になるだけでなく、速度も0に戻ってしまいます。制限時間の残りが0になるとゲームオーバーですが、そうならない限りは何度でも挑戦可能なので、誰もがプレイを楽しめる優しい仕様と言えるのではないでしょうか。
ゴールすると、その基地が所属する国の旗が掲げられます。これで主要国の国旗を憶えられるというのも、教育シリーズならでは。ちなみに南極点では、ペンギン君の旗が登場します。道中に現れる旗をキャッチすると500点、魚を捕れば300点、氷穴やクレバスをクリアすると30点、ゴールするとステージボーナスとして残りタイム×100点が、それぞれ入ります。制限時間内に次の基地へ到着出来なければゲームオーバーです。
道中に現れる旗や魚をゲットすれば、スコアアップ! あまり欲張りすぎると、アザラシにぶつかったりクレバスに落ちてしまうことも。アザラシは色からモグラに見えるかもしれませんが、あくまでもアザラシです(笑)。ルールがシンプルなので簡単かと思いきや、ただ最高速でスケーティングするだけではなかなか上手くいきません。例えば、クレバスが2つ連続して出現する部分では、スピードを落として1つずつ飛び越えなければならないパターンと、2ついっぺんにジャンプしてクリアする必要がある場合など、なかなかに工夫が凝らされています。しかも、旗や魚を狙って欲張ると、その先に上手い具合にクレバスやアザラシが登場するため、プレイしていると“ムキー!”となることも多いはず。カーブでは遠心力が働くため、直線の時と操作感も変わるなど、実はかなり練り込まれた造りとなっていました。
ペンギン君は最高速度の場合、1秒間で約25kmほどスケーティングしています。わかりやすく表現すると、時速なんと90000km! そのため、各国の基地が1000km以上離れていても1分前後で到着することができるのです。その速度でアザラシに当たってもヨロケるだけで済むペンギン君は、とっても丈夫……。“教育シリーズ”ということで、同梱されている解説書には南極の氷について/南極大陸の夏と冬/南極の王様・コウテイペンギン/南極の探険史/南極大陸の地図と各国の基地の場所、が書かれています。これだけでも、かなり面白く読めるようになっているのがユニークな部分でした。同じような時代に南極点への冒険を繰り広げた3人についてもダイジェストで書かれているので、興味のある人にはぜひ読んでもらいたいものです。
当時の広告には、教育シリーズには赤文字で小さく“I love ××”と書かれているのが分かります。この時期のソフトにはRC7××という型番が付けられていて、21本目の時点で一覧を掲載した広告もありました。“教育シリーズ”は他にも、第2弾『I love 体育 わんぱくアスレチック』、第3弾「I love 算数 モン太君のいち・に・さんすう』、第5弾『I love 社会 ぽんぽこパン』”が発売されていました。なお、コナミのMSXゲームと言えばF1でポーズ、ゲームオーバー時にはF5でコンティニューという操作方法が身体に染みついている人も多いと思いますが、本作は1983年の作品ということもあってか、どちらの機能も搭載していません。実機で遊ぶ際は“突然のトイレ”といった事態に対処できるよう、PAUSEキーが備わっている本体を引っ張り出してきてプレイするのが良いかもしれません。