Vol.01 EOS R5 Cで8K60Pに挑む。タンチョウヅル撮影~ セットアップ編[R5 C SCENES]
※編集部註:USB-C PDの端子から外部給電して8K60P記録する際、組み合わせて使うレンズがEFレンズの場合、電力が足りなくなることがありますのでご注意ください。今回は、改造する時間もないし、EFレンズは使わずRFレンズで撮影するので、リチウムイオンバッテリからUSB-C PD給電する方法を選択した。端子がUSB-Cなので抜け防止の養生が必要ではあるが、両端がL字コネクタになっているケーブルを使えば抜けにくくなるだろう。そして、何よりもセットアップがシンプルで良い。そこで編集部にUSB-C PDの端子付きのバッテリパックを探してもらった。現時点ではキヤノンから具体的な推奨品の案内はないが、CINEMA EOSを扱っている各販売店であれば、サードパーティも含めたアクセサリのノウハウを持ち合わせていているだろうから、相談してみると良い。今回、編集部に紹介してもらったものはVマウントモバイルバッテリFXLION NANO TWOだ。Vマウントバッテリといえば、ショルダーカメラで使用するような大きなバッテリをイメージするが、最近は一回り小さく、掌に収まるNANOタイプのもの増えていて、バッテリについても小型、軽量化が進んでいる。FXLION NANO TWOもNANOタイプのバッテリで、Vマウント端子からDC14.8Vを給電する他、Dタップ、USB-A、USB-C、マイクロUSB等、モバイル系の様々な電源出力・入力も兼ね備えていて、PC、スマートフォンといったモバイル機器をはじめ、色々な機器への給電ができる。容量もこのサイズで98Whの容量を持っているのも頼もしい。実は偶然にも筆者はRED HeliumでこのFXLION NANO TWOを使っていたので、馴染みがあって安心できる。あとは、EOS R5 Cの機動力と操作性を損なわずに如何にこの外部電源を装着するかだ。そのためにはカメラケージといったリグの組み合わせがポイントだろう。今回は液晶画面の視認性を損なわず、重心バランスが変化しにくいリグを編集部に用意してもらった。
■TILTA Rig関連Cage for キヤノンR5/R6キット「TA-T22-A-B」(使用したのは旧タイプで、後継機は「TA-T22-A-B-V2」)(左)とVマウントバッテリーベースプレート「TA-BSP2-V-G」(右)Vマウントバッテリーベースプレート「TA-BSP2-V-G」■Vマウントバッテリ Vマウントバッテリーベースプレート(左)とFXLION NANO TWO Vマウントモバイルバッテリー(右)Vマウントバッテリーベースプレートにバッテリを装着した様子。バッテリー残容量や各出力の電圧ステータスが表示される用意してもらったリグはTILTA製のものだ。TILTAはシネマカメラからミラーレスカメラまで幅広くリグを提供していて、レンズコントロールシステムやマットボックス、スタビライザーシステムなどトータルで揃える事が出来るブランドだ。今回のリグはEOS R5/R6用のケージとVマウントバッテリープレートの2つで構成されている。ケージとバッテリプレートを短いロッドでジョイントすることができる仕組みになっている。バッテリをサンドイッチするようなかたちでマウントでき、バッテリの厚さに応じてロット範囲内で高さを調整できるのもありがたい。また、Vマウントバッテリーベースプレートの底部にネジ穴があるので、三脚に載せることもできる。多少、大きく、重くもなるが、手持ち撮影でも問題なく使えるし、バッテリ交換のロスも少なく済むのでこの組み合わせは有りだなと感じた。 ※画像をクリックして拡大 Lexar CFexpress 512GBカード LCFX10-512CRBメーカー各社は、カメラ内部、特にイメージセンサーの温度の上昇を如何に軽減できるかを課題とし、対策を検討しててきた。その表れのひとつとして、EOS R5 Cが放熱ファンを内蔵し、本体内部の熱を強制排出する機構を採用したのだと思う。その成果として、8K 12bit RAWを60Pで長時間ノンストップで内部記録が実現できるようになったことは、諸手を挙げて歓迎したい。もう一つの問題が、CFexpressカード自体の温度上昇だ。一般的には高速で読み書きさせるとカード自体のパワーが必要となり、消費電力が上がる。それに応じて発熱量が増えて、記録時間の経過とともにカード自体の温度が上がっていく。正常な記録を担保できなくなる前に、またメモリの保護のためにも、各メーカーが設定した温度に達すると記録を停止させる処置をとっているといわけだ。EOS R5 Cで8K60P記録するためには2,570Mbpsの書き込みに対応できるスピードが必要だ。これだけのスピードが要求されるので、当然ながら、カード選びも気を付けなければいけない。記録メディアで使われるNAND型フラッシュメモリに色々な記録方式があるのはご存じだろうか。主にSLC(Single Level Cell)、MLC(Multiple Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)という方式があり、現在、SDカードやCFexpressカード、SSDで主流で使われている方式がTLCと言われている。それぞれの方式は、書き込み速度(スピード)、書き込み耐性(書き替え回数)、容量・性能単価(コストパフォーマンス)に特徴があり、メリット、デメリットがある。EOS R5 Cにおいては、8K60P記録が止まらず長時間実行できることが必要なので、シンプルな構造で書き込み速度の速いSLCが理想だ。スペックでうたわれている見た目の書き込みスピードだけでなく、持続的な高速性能があるかないかで、カード自体の省電力化、つまり発熱にも差が出てくる。書き込みスピード要件を満たして且つ、省電力・低発熱(熱上昇が少ない)のCFexpressカードを選ぶ必要があるということだ。今回カメラボディと一緒にお借りしたのは、LexarのProfessional CFexpress Type BカードGOLDシリーズの512GBだ。国内代理店によると、このCFexpressはpSLC方式(MLCやTLCをSLCとして疑似的に使えるPseudoSLC)を採用しているとのこと。EOS R5 Cとの組み合わせで8K60Pのテストを行ってみたが、問題なく動作した。あとは、実践で更に検証してみたい。 ※画像をクリックして拡大まとめ以上、セットアップをしながら、EOS R5 Cの特徴や注意点をレビューしてみた。繰り返しになるが、EOS R5Cは、EOS R5譲りの静止画性能と8K CINEMA EOSの動画性能を持つ、静止画と動画のハイブリッド機である。この小型ボディで8K 12bit RAWを60Pで長時間ノンストップで内部記録できるのは大変素晴らしい。早速R5 Cを持ち出し収めてみた。タンチョウヅル撮影の前哨戦として見ていただきたい。動画を見る次回、釧路タンチョウヅル撮影編での3つのBase ISOモード機能や実際に撮影できた8K60Pの動画等、実践で試した結果をレビューしたい。お楽しみに。羽仁正樹 (Saha Entertainment)東京を拠点にグローバルに活躍する映像クリエーター、写真家。自身が撮影し制作を手がけた映像・写真の作品は、TV 番組や映画、世界各国で開催される展示会、ディスプレイ、TVCM やポスターなどの広告に多用された実績を持つ。価格:税込590,000円価格:税込460,000円元の記事を読む