ヤマハが7年分の知見を生かした――、最新アクセスポイント「WLX212」に詰まった“コダワリ”【前編】
これまでのWLXシリーズで得た知見を生かす
ヤマハは2013年に、初代モデルの「WLX302」を発売し、アクセスポイント事業に参入した。もともとSOHOルータ市場で大きなシェアを持つ同社だが、そこから次の顧客の課題として拠点のLANの管理にも目を向けた結果、スイッチやアクセスポイントといったLAN製品を作り始めたと、平野氏は流れを説明した。
その後7年ほどWLXシリーズを販売してきて、ヤマハが得た知見として、主に小規模な拠点を複数管理するときの「実践的な管理の必要性」があったのだという。
例えば、小規模拠点でも活用が進むと複数台のアクセスポイントを運用することが必要になるが、そのときに“ちょうどいい機能と性能の無線LANコントローラー”が必要だったというのだ。複数台の設定を行う場合には、1台目との設定の整合性をどうするか、といった点には神経を使うし、冗長構成や機器連携を行おうと思うと、作業はさらに増えてしまう。
また無線LANの活用が進めば、複数拠点への導入を行うことになるだろう。全国に散らばった小規模拠点を管理するためにも、“ちょうどいいコントローラー”が必要とされており、そのためにクラウド型管理なども求められていたとのこと。
一方では、WLXシリーズのヤマハルータへの“依存”も、足かせになっている部分があったという。ヤマハではWLXシリーズにおいて、ヤマハルータ経由で管理や見える化などの機能を提供してきたが、現場では他社のルータやスイッチが入っているところも多く、またルータとアクセスポイントとで管理者やSIerが分かれている場合もあった。ルータとの連携を前提としている限り、そうしたところではWLXシリーズが選ばれにくくなってしまうのだ。
そのほか管理の問題と並んで、小規模拠点では「理想的な場所」にアクセスポイントが設置されるとは限らないことも実感した。アクセスポイントは見通しのよい壁や天井に設置することが理想で、従来のWLXシリーズもそれを想定して薄型に作られている。しかし例えば、学校において、職員室の机に平置きされていたため、アクセスポイントの電波が行き届かないといったケースもよくあったという。
「理想的な状態を想定した性能では間にあわない」と平野氏。秦氏も「アクセスポイントは、ルータやスイッチと違って、技術者ではないエンドユーザーの方が設置することも多い」と語る。
さらに置き場所という意味では、カフェや飲食店などでもアクセスポイントの利用が増えてきたものの、そうした場合、従来の白1色だけでは周囲に合わず、ほかのカラーが望まれる場合があることもわかった。