2020年 日本の広告費
図表1
<2020年 日本の広告費の概況>◆2020年の総広告費は、通年で6兆1,594億円(前年比88.8%)となった。3月以降、新型コロナの影響により国内外の人の動きが制限され、4月に発出された緊急事態宣言以降、日本経済は大きく減速。前年までのインバウンド消費がほぼなくなり、外出自粛により外食、交通・レジャーを中心に大きなダメージを受け、広告業界もその余波を受けた。政府や自治体主導の経済対策・感染対策が取られていく中、7月以降は徐々に回復の兆しを見せ始め10-12月には前年並みに戻りつつあったが、通年では前年を大きく下回った。◆東日本大震災の2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。かつリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来、11年ぶりの2桁減少となり、1947年の「日本の広告費」統計開始以来、2番目の下げ幅となった。◆外出・移動の自粛により、巣ごもり需要が活発化した。デリバリーやネット通販、オンライン会議やオンラインイベント・セミナー(以下、ウェビナー)、リモートワーク、キャッシュレス決済など、社会におけるデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が一気に加速。それに伴い、インターネット広告費が先行して回復し、通年でプラス成長となった。マスコミ四媒体由来のデジタル広告費も前年に続き2桁成長。デジタル起点の広告販促活動がさらに進化・成長した1年となった。一方、プロモーションメディア広告費は、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)」「 東京2020パラリンピック競技大会」(以下、東京2020オリンピック・パラリンピック)をはじめ各種イベント・展示会、従来型の広告販促キャンペーンの延期・中止に伴い大幅に減少した。また、それらに付随した広告展開を担うマスコミ四媒体広告費も大幅減となった。
<媒体別広告費の概況>
(1)マスコミ四媒体広告費<2兆2,536億円(前年比86.4%)<6年連続の減少となった。「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」はすべて大きく前年割れ。
(2)インターネット広告費<2兆2,290億円(前年比105.9%)<1996年の推定開始以来、一貫して成長を続け、「マスコミ四媒体広告費」に匹敵する2.2兆円規模の市場となった。4-6月期は新型コロナの影響を受けたものの、通年でEC(Eコマースやネット通販ともいう。ライブコマースも含む)などが堅調だった。マスコミ四媒体事業者が提供するインターネットサービスにおける広告費「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」803億円(前年比112.3%)や「物販系ECプラットフォーム広告費※」1,321億円(同124.2%)の二桁成長が全体をさらに押し上げた。
※「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うEC(電子商取引)プラットフォーム(これを「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ"出店"を行っている事業者(これを「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義。より広い意味での「EC領域での販売促進を図るインターネット広告費」全体を指すわけではない。
(3)プロモーションメディア広告費<1兆6,768億円(前年比75.4%)
図表2
<媒体別広告費詳細>(1)マスコミ四媒体広告費(媒体別業種別広告費は添付PDFの図表7を参照)
①新聞広告費<3,688億円(前年比81.1%)・新型コロナの影響による各種イベントの中止、宣伝予算の削減などに伴い出稿が大幅に減少。7-9月期以降は回復傾向だったが、通年で減少となった。・業種別では、「情報・通信」がウェビナー、リモートワーク関連、オンラインショップ(EC関連)などの出稿増加により前年比107.9%と伸長。一方、「交通・レジャー」は同51.1%と大幅に減少。特に旅行会社や芸能・芸術・文化施設、各新聞社のイベント告知が大きく減少した。
②雑誌広告費<1,223億円(前年比73.0%)・紙の出版物の推定販売金額は、前年比99.0%と16年連続のマイナスとなったが、その減少幅は最も小さくなった。電子出版市場はコミック誌の成長と巣ごもり需要の影響を受け、同128.0%と引き続き大きく伸長。紙と電子出版市場を合わせた全体も同104.8%となり、2年連続で前年を上回る結果となった。(※数字出典:出版月報2021年1月号)・雑誌広告費は、新型コロナ拡大の影響による広告宣伝費の落ち込みやデジタルシフトの加速などにより、前年を下回る厳しい状況が続いた。・業種別では、巣ごもり需要の影響で「家電・AV機器」が前年より増加したが、「ファッション・アクセサリー」「化粧品・トイレタリー」は前年に引き続き大幅減となった。
③ラジオ広告費<1,066億円(前年比84.6%)・新型コロナの影響で、各種イベント告知、「交通・レジャー」「流通・小売業」などの出稿が減少し、通年で大幅に減少した。一方、巣ごもり需要により「家電・AV機器」などの出稿が増加した。
④テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)<1兆6,559億円(前年比89.0%)◇地上波テレビ<1兆5,386億円(同88.7%)・新型コロナ拡大に伴う広告費削減などの影響により、地上波テレビ広告費は1兆5,386億円(前年比88.7%)となった。・番組(タイム)広告費は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」「FIFAワールドカップカタール2022・アジア二次予選」などの開催延期、プロ野球開幕延期、プロゴルフトーナメント中止・無観客での開催など、大型スポーツイベントの延期・中止と、広告主の業績不調による固定費削減の影響もあり出稿減となった。地域別では、通年で基幹8地区すべてが前年を下回った。
◇衛星メディア関連<1,173億円(同92.6%)・2020年3月にBS無料放送局1局が閉局、単純減となった。・新型コロナによる巣ごもり需要の高まりにより通販市況は堅調だったものの、通販以外の広告出稿は減少傾向だった。
(2)インターネット広告費①インターネット広告媒体費<1兆7,567億円(前年比105.6%)・新型コロナによる消費の低迷および広告出稿減少の影響を受けたが、他メディアよりも早く回復基調となり、前年比105.6%となった。・インターネット広告媒体費のうち運用型広告費は1兆4,558億円(同109.7%)。巣ごもり需要によってSNSやEC、動画配信サービスへの接触機会も増え、大手プラットフォーマーを中心とした運用型広告の需要が高まった。また、マスコミ四媒体由来のデジタル広告における運用型広告の活用がさらに進んだ。マスコミ四媒体由来のデジタル広告費 803億円(インターネット広告媒体費の一部、同112.3%)・マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は、前年に引き続き二桁成長となった。・新聞デジタル 173億円(同118.5%)