「M1 Pro」「M1 Max」は結局どこが違って何が進化したのか 極めて合理的なAppleの選択:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
AppleがMacに採用するSoC(System on a Chip)をIntelチップから独自設計チップへと切り替えることを表明したのは昨年6月のこと。今回発表した新しい14インチと16インチの「MacBook Pro」、そしてそれらに搭載される新SoCの「M1 Pro」と「M1 Max」は、昨年末から2年をかけた移行計画の中間地点となる。
新しい14インチと16インチのMacBook Proが搭載するApple独自Socの「M1 Pro」と「M1 Max」ここでは発表後に取材などで明らかになってきた、M1 ProとM1 MaxのSoC設計に関する情報をまとめていく。実際、MacBook Proに搭載された場合のパフォーマンスはシステムごとに動作が最適化されていると考えられるため、そこは今後実機のレビューで明らかにしていきたい。
M1 Proの特徴(発表会の配信動画より)M1 Maxの特徴(発表会の配信動画より)結論から言えば、M1 ProおよびM1 Maxは、いずれも高い処理スループットを要求するメディアクリエイターが使うプロフェッショナル向けに特化した設計を採用している。GPU性能とビデオ処理性能を最大化したいユーザーにはM1 Maxを、それ以外のプロクリエイターにはM1 Proが適しているだろう。
SoCのダイ面積拡大という問題と向き合いながら、徹底してM1のコンセプトを拡張すると、ここまでできるのだという、他社が決して進まなかった道を追求したスーパースポーツカーのようなものだ。
M1、M1 Pro、M1 Maxのサイズ比較。ダイ面積は拡大しており、トランジスタ数はそれぞれ160億個、337億個、570億個だ。M1 MaxはM1の3.5倍、M1 Proの1.7倍となる設計コンセプトは共通で、各処理回路設計はM1を踏襲している部分もあるが、後述するように実パフォーマンスは段違いになるよう的確な改良が行われている。
一方で一般的なモバイルパソコンユーザーには、M1の方が適していると感じる部分もある。
まず、M1を引き継いでいる部分からだ。M1と同じといっても、これは悪い話ではない。同じと思われるコンポーネントでも、組み合わせたときのパフォーマンスは高くなるように工夫、あるいはオーバーヘッドが起きないように調整が行われているからだ。
16コアのNeural Engineに関してはM1と同一だ。毎秒11兆回の演算性能はiPhone 12シリーズが採用するA14 Bionicとも共通である。Core MLを通じた機械学習処理のスループットはM1に比べ向上しているが、これはCPUやGPUの性能向上がもたらしているもので、Neural Engineそのものに変化はない。
M1 ProのNeural Engineは左下に位置する。M1と同一で、毎秒11兆回の演算性能だ(発表会の配信動画より)それでもIntelチップ時代に比べると劇的に向上し、Appleによると従来の16インチMacBook Proが採用していたIntel Core i9モデルと比較して9倍の演算速度だ。この性能向上は、Core MLを通じた自動処理(動画編集ソフトでの顔や被写体の認識と追従処理、背景と被写体の分離処理など)で劇的なほどの改善をみせる。
アプリケーションレベルの体験の違いはMacBook Proの実機で確認したいが、M1に使われている回路IPがレイアウトされているものの、実際のアプリではよりよい結果がもたらされている部分が多い。
その理由はM1、M1 Pro、M1 Maxの共通である共有メモリアーキテクチャが大幅に強化されているためだ。実際、M1 Pro、M1 Maxの高性能・高効率CPUコア、GPUコアなどはM1と共通と推察されるが、実際のアプリにおける処理スループットは上がっているだろう。
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